日本薬理学雑誌
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抗変形性関節症薬の作用機序の検討
Ulinastatinを中心として
江田 兼弘加藤 克明長尾 祐二岡 哲雄
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1992 年 99 巻 2 号 p. 93-107

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抄録

抗変形性関節症作用を有する3種類の薬の作用機序について, 主として単球からのinterleukin 1 (IL-1) 遊離, 軟骨細胞におけるプロテオグリカン合成ならびに白血球における活性酸素産生に及ぼす影響について比較検討した.ヒト尿中より精製された糖タンパク質であるulinastatinは, 単球からのIL-1遊離を抑制し, またIL-1による軟骨細胞のプロテオグリカン合成能の低下を抑制した.さらに, ulinastatinは白血球における活性酸素産生を強力に抑制した.ulinastatinのこれらの作用には各種プロテアーゼに対する阻害作用が関与するものと考えられた.また, triamcinoloneは, 単球からのIL-1遊離を強力に抑制し, IL-による軟骨細胞のプロテオグリカン合成能の低下を抑制した.しかし, triamcinolone単独では, 軟骨細胞のプロテオグリカン合成能を低下させた.また, triamcinoloneは白血球における活性酸素の産生には影響を及ぼさなかった.一方, indomethacinは, 軟骨細胞のプロテオゲリカン合成能および白血球における活性酸素の産生には影響を及ぼさなかったが, 単球からのIL-1遊離をむしろ促進した.以上の結果から, 3種の薬はそれぞれ異なった作用点を有していることが明らかになった.また, これらの中でulinastatinは, 関節軟骨障害に関与する種々の因子を幅広く抑制することから, 変形性関節症治療に望ましい薬であることが示唆された.

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