日本薬理学雑誌
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低酸素性致死に対するNaftidrofuryl Oxalateの延命作用
林 潤一佐藤 恭子秋本 孝行佐藤 秀昭秦 葭哉
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1992 年 99 巻 4 号 p. 247-254

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抄録

酸素依存度の高い脳神経系を保護することで低酸素負荷による致死が遅延されることが指摘されながら,延命効果を客観的に評価できる指標の検討は充分なされていない.今回,血圧・呼吸・心電図・脳波の各生存徴候の同時連続的観察を行うことにより,低酸素性障害(致死)の評価には血圧を指標とした生存時間を用いることが客観性に優れていると考えられた.この指標を用いて,脳循環改善薬であるnaftidrofuryl oxalateの低酸素性致死に対する延命作用を検討した.naftidrofuryl oxalate 10mg/kgの腹腔内前投与は対照に比べ生存時間を48%有意に延長した.脳神経機能改善薬のidebellone 10mg/kgおよびnicergoline 10mg/kgには対照と比べ低酸素下生存時間に有意差を認めず,bifemelane hydrochloride 10mg/kgには43%の有意の延長を認めた.naftidrofuryl oxalate 25mg/kgとbifemelane hydrochloride25mg/kgとの併用は各々の単独より生存時間を15%あるいは19%延長した.以上の結果は,低酸素性致死に対しnaftidrofuryl oxalateには代表的な脳代謝賦括薬のbifemelane hydrochlorideと同等の低酸素障害防止効果が期待できること,脳循環改善作用に加え生存に関わるエネルギー代謝保護効果も有する可能性があることを示唆している.

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