日本薬理学雑誌
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Z-103の酢酸潰瘍ラットにおける胃粘膜付着作用
清木 雅雄会田 浩幸米良 幸典新井 金保外山 誠司古田 盛森田 仁堀 裕子米田 智幸田頭 栄治郎
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1992 年 99 巻 4 号 p. 255-263

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抄録

Z-103のラット酢酸潰瘍モデルに対する胃粘膜付着性について,肉眼的,組織学的,並びに生化学的に検討し,その結果をZ-103の類縁物質であるZnSO4およびZnSO4とL-carnosineの配合剤と比較した.その結果,Z-103は酢酸潰瘍に経ロ投与した場合,絶食および食後のいずれの条件下においても正常粘膜および潰瘍部位に付着することが判明した.また絶食条件下でその付着強度並びに付着時間は用量依存的に増加することが確認され,特にZ-103,100mg/kgの投与では正常部位で6時間,潰瘍部位で24時間まで付着することが認められた.また組織学的観察により,正常組織では被蓋上皮細胞層から胃粘膜固有層内に至るまで,また潰瘍部位では潰瘍最表層部並びに肉芽組織においてZnの局在が認められた.さらに胃組織中Zn含量の測定を行ったところ100mg/kgの用量において,正常部位では6時間まで潰瘍部位では24時間まで有意にZn含量は増加していた.このことより,Z-103は潰瘍部位に対して高い親和性を有する可能性が考えられた.一方,Z-103類縁物質は肉眼的観察においてZ-103とほぼ同等の付着性を示したが,Z-103とZnSO4投与の胃組織中Zn含量について比較したところ,正常部位および潰瘍部位ともZnSO4のほうがZ-103に比べZn含量は少なかった.このことより,Z-103という形態をとった方が胃粘膜に対する付着性は優れているものと思われた.以上まとめると,Z-103は酢酸潰瘍ラットに対して長期にわたり付着浸透作用を示し,特に潰瘍部に対して高い親和性を有するものと思われる,よって本薬剤は潰瘍上層部に被覆層を形成することにより粘膜保護作用を示す可能性が考えられ,また同時に胃粘膜浸透性を示すことより局所的に種々薬理作用を発現している可能性が推定された.

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