日本顎関節学会雑誌
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原著
咀嚼筋痛障害と睡眠障害の関連性
―ピッツバーグ睡眠質問票日本語版を用いた検討―
小林 大輔清水 博之杉崎 正志重松 司朗
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2016 年 28 巻 3 号 p. 232-239

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抄録

顎関節症発症に関与する因子は多因子性であり睡眠障害もその一因とされているが,その因果関係についての研究は少なく十分に解明されていない点も多い。顎関節症患者,特に咀嚼筋痛障害を有する患者に対し睡眠障害との関連性について質問票を用いて検討を行った。対象は,2015年4月1日より2016年3月31日までに当科を受診した,咀嚼筋痛障害を有する顎関節症女性患者40名とし,顎関節症症状のない女性30名を対照群とした。睡眠障害に関してはピッツバーグ睡眠質問票日本語版(以下PSQI-J)を用いて評価した。患者群に対する調査項目は咬筋部圧痛,開口時咬筋部痛,無痛自力最大開口量,日常生活支障度とした。2群を比較した結果,PSQI-Jスコアは有意に患者群のほうが高かった。またPSQI-Jの各項目と各症状との関連を調べた結果では,<睡眠の質>では咬筋部圧痛(p=0.036),<入眠時間>では咬筋部圧痛(p=0.009),<睡眠時間>では日常生活支障度(p=0.021),<眠剤の使用>では開口時咬筋部痛(p=0.026),および咬筋部圧痛(p=0.024)が有意な関連を認めた。また患者群におけるPSQI-J合計スコアと咬筋部圧痛に有意な関連を認めた(p=0.003)。睡眠障害が顎関節症,特に咀嚼筋痛障害の発症に関連をもつことが改めて示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本顎関節学会
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