日本顎関節学会雑誌
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顎関節痛を調節する下行性疼痛制御機構について
黒瀬 雅之岡本 圭一郎
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2019 年 31 巻 3 号 p. 149-158

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抄録

顎関節痛を含めた口腔顔面痛は,難治であることから治療が長期にわたることが多く,患者も長く続く疼痛にQOLが損なわれている。慢性疼痛は,長く続く急性痛ではない。実際,急性疼痛を誘発する咀嚼筋・顎関節部の炎症や損傷などの器質的障害が除去されても疼痛は継続し,NSAIDsの効果が限局的または効果の減弱がみられる一方で,抗うつ・抗てんかん薬が有効である背景からも,痛みの長期化や増悪には,末梢組織の器質的変化以上になんらかの中枢性の活動変化:可塑性変化が要因となっている。顎顔面領域での侵害受容ネットワークにおいて,感覚神経からの上行路の起始核であり,下行性疼痛制御系を介して下行性に感度調節を受ける延髄後角部(三叉神経脊髄路核尾側亜核から上部頸髄)の侵害受容ニューロンの興奮性は,主観的な痛みの強度とリンクしている。現在までの基礎・臨床の両面の研究から,外因性・内因性のさまざまなシグナルは,脳内の可塑性変化を引き起こし,結果として生じる延髄後角部の侵害受容ニューロンの興奮性の増強が,慢性疼痛の背景とされている。そこで,本稿では,慢性痛を急性痛の連続ではなく,脳内の侵害情報に対する応答機構の破綻によって生じる障害として捉え,脳内の侵害情報に対する応答機構のうち,侵害受容ニューロンの活動性を直接調節する下行性疼痛制御系に着目し,正常時・病態時と分けてわれわれの研究結果を基に考察を加えていく。

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© 2019 一般社団法人 日本顎関節学会
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