日本顎関節学会雑誌
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スタビライゼーションスプリントの閉口終末位の安定効果
長谷川 泰陽前田 照太村松 豪太吉村 計宣井上 宏
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2001 年 13 巻 3 号 p. 319-324

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抄録

顎関節症の治療法としてスプリント治療による保存療法の効果はよく知られている。しかし, その作用機序は明らかではない。そこでわれわれはスタビライゼーションスプリントの顎位修正効果について着目し, スプリントを経時的に装着させ, 装着前後においてのタッピング運動の下顎閉口終末位であるタッピングポイントの変動を観察した。
被験者は, 本学学生を対象に, 理想的正常咬合者6名, 咬合不正で不顕性顎関節症を有する者6名とした。実験による被験運動は, 30秒間のタッピング運動とした。頭部の固定は行わず, 直立座位において通法により顎機能総合解析システムを用いて下顎切歯近心偶角部の動きを観察した。
用いたスプリントは上顎スタビライゼーションタイプとした。実験条件を, スプリント未装着, 装着直後, 3時間経過後継続装着, 3時間経過後スプリント撤去直後の4条件とした。計測結果の3次元座標を波形分析ソフトAcqKnowledge (R) によりタッピングポイントを導出し, その『ばらつき』について比較検討した。その結果, 水平面における前後方向と左右方向の『ばらつき』比較では, 前後方向に大きな『ばらつき』を示した。また前後方向におけるスプリント装着前後の天然歯でのタッピングポイントを比較すると, 撤去後に咬合不正群は『ばらつき』が有意に減少した。
以上よりスプリントを装着により, 咬合不正者におけるタッピングポイントの『ばらつき』を減少させる傾向が示唆された。

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