日本顎関節学会雑誌
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関節円板の復位により閉口障害を呈した顎関節内障の一例
高山 裕司高木 律男安島 久雄永田 昌毅
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2008 年 20 巻 1 号 p. 16-19

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抄録

今回われわれは, 内側に転位していた左側関節円板が復位する際に生じる閉口障害 (臼歯部の離開) を経験したので報告する。
症例: 35歳, 女性。主訴: ときどき口が閉じにくいことがある。現病歴: 以前に左側顎関節に雑音があったかどうかはっきり覚えていない。また, 明らかな開口障害の記憶はない。1998年10月末, 大開口時に大きな音がして, その直後から上下顎の歯が接触しない程度の閉口障害が生じた。この時点では下顎を左右に動かすことで閉口可能であった。症状に改善がないため, 1998年11月当科初診した。MR所見にて関節円板の内側転位および円板が復位することによる閉口末期の閉口障害が疑われたが, 患者の希望により経過観察となった。しかし, 症状に改善はなく, 逆に閉口障害の頻度が増し, 日常生活に支障をきたすようになったため, 5年後に再評価を行った。処置および経過: 全身麻酔下に関節円板切除術を施行した。術後3日目より開口練習を開始した。現在, 開閉口運動はスムーズで, 開口量は49mm, 閉口障害 (左側臼歯部の離開) の出現はなく経過は良好である。
本症例は, 転位していた関節円板の復位に起因する臼歯部の離開という稀な症例であり, 間欠的に長期に継続し, 日常生活に支障をきたす場合の処置として外科的治療が選択肢の一つとなると思われた。

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