日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
Print ISSN : 0915-3004
ISSN-L : 0915-3004
下顎頭縦骨折の1例
本田 武司小野 啓林 升升井 一朗古本 克磨
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 4 巻 1 号 p. 122-127

詳細
抄録

下顎頭骨折は, 下顎骨骨折の中で比較的頻度が高いものであるが, 下顎頭の縦骨折は稀で, 通常用いられる骨折の位置, 脱臼あるいは転位の有無による分類には含まれておらず, その報告例はきわめて少ない。
最近著者らは, 下顎頭縦骨折の1例に遭遇したので, 若干の考察を加えて報告する。
患者は19歳の男性で, 当科受診の2日前, 転倒してオトガイ部を強打し, 某歯科医院を受診後, 紹介により当科を受診した。顔貌は非対称で, オトガイ部と左側耳前部に圧痛を伴う腫脹がみられた。咬合状態は前歯部の開咬を示し, 開咬距離は上下前歯切端間で25mmであった。オルソパントモX線写真で下顎正中部骨折を認めたが, 下顎頭部には異常所見はみられなかった。また, 顎関節矢状断層X線写真でも骨折は観察されなかったが, 前頭断層X線写真およびCT写真により, 下顎頭の縦骨折と内側極を含む小骨片の前内方転位を認めた。手術は全麻下に, 下顎正中部の観血的整復固定術と, 下顎運動の障害となっていた下顎頭の小骨片の摘出, ならびに前内方に転位し断裂変形していた関節円板を切除し中間挿入物としてSilicon rubber sheet® Dow Corning Co. USA.を使用した。術後経過は良好で, 3か月後にこれを摘出した。術後約2年を経過した現在, 機能的に良好な顎運動が得られている。

著者関連情報
© 一般社団法人日本顎関節学会
前の記事 次の記事
feedback
Top