馬頭岩体は中・古生代の八溝層群中に非調和的に産し. 105MaのK-Ar角閃石年代を示す。岩体は種々のハンレイ岩類,石英モンゾ閃緑岩,花崗閃緑岩,花崗閃緑斑岩と,小岩体(3.5km×2km)の割に多様な岩石より構成されている。これらの岩石はカルクアルカリ系列,磁鉄鉱系列, Iタイプ,並びにショーショナイト系列の岩石学的性質を示す。岩体の多様性はハンレイ岩質マグマからの角閃石と斜長石を主体とし,部分的に単斜輝石,黒雲母,アルカリ長石の除去を伴う分別作用によりもたらされた。この分別作用は岩体が地殻浅所(3-6km)に位置していた現在地に貫入する以前に行なもれた。斜長石と単斜輝石の化学組成変化の様子と,単斜輝石と黒雲母に富むハンレイ岩と角閃石に富むハンレイ岩が同一露頭で共存することがあることから,ハンレイ岩質マグマの一部では晶出のある時期に水蒸気圧が急激に上昇したと推定される。この急激な水蒸気圧の上昇は,水に飽和した花崗閃緑岩質マグマのハンレイ岩質マグマへの流入によりもたらされたのであろう。