岩鉱
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氷上および気仙川花崗岩体周辺の古生層中の炭質物のラマン散乱によるグラファイト化作用の評価
土屋 範芳
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1993 年 88 巻 3 号 p. 131-140

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抄録

南部北上山地,氷上および気仙川花崗岩体周辺の古生層中に含まれる炭質物のラマソスペクトルについて検討を行った。炭質物のラマンスペクトルは2本のスペクトルを示し,1本は1350cm-1付近に,もう1本は1620cm-1に出現する。この2本のスペクトルの強度の比I1135/I1620。は石炭化作用およびグラファイト化作用の進行とともに減少し,炭質物のc軸方向の結晶子の大きさLc (002)が190Å以上においては0となる。炭質物を母岩から分離する過程で生じるフッ化物のため,石墨化度を表す指標をX線回折から求められない試料がある。しかしながらラマンスペクトルのI1350/I1620から,他の化合物の存在下でも石墨化度を決めることができる。
南部北上山地の気仙川花崗岩体西縁から採取したグラファイトのラマンスペクトルは理論的なE2g2の伸縮モードの1580cm-1より高波数側に1本のスペクトルを示す。この高波数側へのシフトはこのグラファイトがグラファイト層間化合物である可能性を示している。
南部北上山地氷上花崗岩体周辺のシルル系およびデボン系中の炭質物のI1350/I1620は0.2以上であり,氷上花崗岩体からの熱的影響は認められなかった。ラマソスペクトルを用いることにより堆積岩および変成岩中の炭質物のグラファイト化度を評価でき,花崗岩体の熱的影響を推定することが可能である。

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