各種コーパスに出現する「足を洗う」という表現について調査すると,多様な用法が見られた。そこにある種の言語変化が反映され,言語内的な要素と言語外的な要素が言語変化に影響を与えていることが示唆された。言語変化の全体像を把握するためには,複数の表現に対する調査が必要とされるが,本研究では,まずこうした個別事例を取り上げ,心理や社会の認識を含む視点から検証することで,言語変化へのアプローチを試みた。先行研究が指摘した如く,コーパスは辞書記述の精緻化や内容の改訂において絶大な力をもっている。本研究においても,コーパスを活用することによって,「足を洗う」の使用実態が解明でき,個人の内省を大幅に超える情報源が有効であることを指摘した。今後,コーパスから獲得した有益な情報をより正確な辞書記述や教材開発に活用することが期待される。