2016 年 14 巻 p. 104-127
日本語教育の現地化とは何か。本稿ではこれを現地の教師たちが互いを,また現地の日本語教育をエンパワーメントし合うことと捉えている。マレーシアの大学教員である筆者は,現地において日本語教師たちとエンパワーメントし合うために「何が必要なのか」「私に何ができるのか」を考え,クリティカル・アクションリサーチとしてB大学をめぐる社会的実践活動を繰り返し省察している。本稿では,現場の教師が求めているものと現状の矛盾を明らかにし,その矛盾の克服に私がどのような働きかけをしていたのかを活動理論を用いて分析し日本人教師の役割を探った。矛盾の克服には,「情報」や「同僚間の連携」を道具として,結びつきの実践を行うことが必要であること,たとえビジターという外国人教師であっても,日本人教師が現地の教師間の共同体の境界を越えた第3の共同体の同僚として教師間にノットワーキングを働きかける役割が担えることが確認できた。