言語文化教育研究
Online ISSN : 2188-9600
ISSN-L : 2188-7802
論文
ハーフとひきこもりの部分的つながり
複言語・複文化性の原点回帰と「移動」概念の再定義
藤谷 悠
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 17 巻 p. 339-359

詳細
抄録

東浩紀の『ゲンロン0―観光客の哲学』(2017)によると,現代の世界は,ナショナリズムとグローバリズムなど,様々な局面で二項対立的な「二層構造」になっているという。本研究は,国際性という文脈のみに単線化された結果,「二層構造」を生み出す要因となっている複言語・複文化の物語を,「本来の姿」へと回帰させることを目指している。単線化した複言語・複文化の物語の例として,「移動する子ども」研究を批判対象とし,同研究が暗示する「移動する子ども」と「移動しない子ども」の二項対立的構造を概観しながら,その間に中間的文脈を作り出すことを試みる。そうすることで,同研究における「移動」概念を拡張的に再定義する。これらの目的に向けたナラティブな調査として,日仏「ハーフ」の人々を対象としてライフストーリー調査を行なった。それに加え,筆者自身の「ひきこもり」経験をオートエスノグラフィーとして記述し,それをハーフたちの語りと交差させる。そうして,「ハーフ=移動する子ども」と「ひきこもり=移動しない子ども」との間に「部分的つながり」を見立てることで,複言語・複文化の物語を複線的な「本来の姿」へと蘇らせるのである。

著者関連情報
© 2019 by Association for Language and Cultural Education
前の記事 次の記事
feedback
Top