抄録
本稿では,初級の学習者を対象とした活動型日本語教育において,教師と学習者はいかなる対話のプロセスを創出するのか,その具体的なプロセスを考察することで,活動型日本語教育のあり方,意義について主張した。活動型日本語教育を考察するにあたり,山口喜一郎,長沼直兄,木村宗男の問答法の考え方と方法を批判的に捉え直した。実践研究からは,何度も繰り返されるやりとりを通して,徐々に学習者一人一人の考えていることが浮かび上がり,学習者の使用する語彙や文型が広がりを見せていくプロセスが浮かび上がった。活動型日本語教育のあり方としては,明示的な文法説明をすることなく,やりとりの中で語彙や文法を理解させ,活用につなげていくこと,さらに,学習者の語る内容を制限せずに自由に語れる場を保証すること,考えを深めるための不断の問いかけが重要になることを指摘した。その上で,文法や語彙の習得を主目的としたものではない,活動型日本語教育の意義を示した。