GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2019 Volume 61 Issue 11 Pages 2538-2540

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概要

沿革・特徴など

呉市は,広島県の西南部に位置し,瀬戸内海に面した温暖な気候と自然環境に恵まれた都市である.歴史的には,海軍の基地,軍港として栄えた街であったが,戦後は造船,造機,製鋼などの機械金属工業やパルプ産業の企業が進出し,臨海工業都市に変貌を遂げた.

中国労災病院は,昭和30年(1955年)労働福祉事業団の設立に伴い,労災医療の基幹病院として開設された.開院時は,5診療科50床でスタートしたが,昭和61年(1986年)には,救急病床10床を加え,410床となり,平成28年(2016年)より,独立行政法人労働者健康安全機構の一員として,現在に至っており,臨床研修指定病院,地域医療支援病院,災害拠点病院,広島県がん診療連携拠点病院,地域周産期母子医療センターなどの指定を受け,中核病院として機能を果たしている.

内視鏡部門は,日本消化器内視鏡学会の指導施設,日本消化器病学会,日本胆道学会の認定施設となっており,救急対応,がん診療とともに研修体制を整備して診療にあたっている.

組織

内視鏡室は,診療科の一つとして位置づけられており,専属医師(部長)が,配されている.実際の内視鏡検査・処置は,消化器内科医とともに行っている.看護師は,外来部門に属し,内視鏡技師資格を有する者と,将来技師資格を取得する希望を持っている者で構成される.その他,メディカルクラーク,臨床工学技師を配置している.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は,当院1階の外来部門に位置し,救急外来,内科外来及び放射線部門に隣接しており,アクセスが良好な場所にある.内視鏡室は,4箇所の内視鏡検査ブース,待合,更衣室,トイレ,診察室,洗浄コーナー及びX線透視室からなり,面積は約192m2を占める.加えて,共有であるが中央処置室内に約90m2のリカバリー室を有している.各検査ブースは,CO2送気が可能で,下部消化管内視鏡検査,ESD,EUS,EUS-FNAなど時間を要する検査・処置で適宜使用し,被検者の苦痛軽減に努めている.内視鏡検査ブースの一つは,ストレッチャーで直接入室し,そのまま処置が可能となっている.また,透視室とはドア1枚で通じており,患者移動やスタッフの動線は短く容易になっている.透視室は,光源のコード類を天井からの配線とし,テレビモニターも天井吊り下げ型として,観察のポジションが容易となるようにしており,かつ,X線線源に鉛カーテンを装着することで検者の被曝を90%軽減している.

内視鏡画像及び検査所見は,ファイリングシステムで管理し,電子カルテで閲覧可能である.加えて,広島県医師会が中心となって進めている病診連携の情報共有のツールであるHMネットに参加しており,患者の同意があれば,連携施設から,放射線画像などと同様に内視鏡検査結果を閲覧することが可能となっている.

スタッフ

(2019年4月現在)

医   師:消化器内視鏡学会 指導医3名,消化器内視鏡学会 専門医2名,その他スタッフ5名,研修医など3名

内視鏡技師:Ⅰ種4名,その他技師1名

看 護 師:常勤4名,非常勤1名

そ の 他:2名

設備・備品

(2019年4月現在)

 

 

実績

(2018年1月~2018年12月まで)

 

 

指導体制,指導方針

初期研修医に対しては,消化器内科を研修中の3カ月間に,消化器疾患の診断のプロセス,治療方針を確定する過程を経験しつつ,必要な内視鏡検査の適応・out come・偶発症の頻度など知識として研修する.次いで,上下部消化器内視鏡の基本操作方法,洗浄方法,処置のための周辺機器の操作を習得する.

1年次の研修は,将来,他の専門分野に進んでも内視鏡の必要性を判断できるように内視鏡検査・処置の必要な消化器疾患・病態についてのレクチャーに比重を置いている.

2年次の研修では,上級医の指導のもと,上部消化管内視鏡検査の引き抜きから開始し,次いで,観察及び記録を経験する.スキルに応じて挿入を経験する機会もある.同時に,種々の検査・治療の介助を行いつつ,原理,目的,手技,方法を習得する.

消化器病あるいは消化器内視鏡専門医を目指す後期研修医に対しては,診断能力の向上と内視鏡スキルの向上を目指す.上部消化管内視鏡検査は,最初上級医の立会いの上で始めるが,原則,単独で行う.次いで,下部消化管内視鏡検査を同様のステップで行う.加えて,生検,EMR,止血術を,適宜,上級医のコメントを受けながら実施する.続いて,ERCP(EST,EPBD),EUS(FNA),EIS,EVLを習得し,習得状況に応じてESDを経験する.

研修医を含め,消化器内科・内視鏡科全員で,週1回 外科(病理含む)との合同カンファレンスに参加し,週1回内視鏡画像・所見の全例見直しと病理結果の確認を行っている.担当症例は,病歴,診断,内視鏡所見などプレゼンテーションを行い,質疑応答を求められる.その延長として,学会・研究会報告,論文執筆の指導も行っている.

現状の問題点と今後

当院は平成14年に新病院が完成し,17年が経過している.内視鏡室は1階中央部分に位置しており,放射線科,エレベーターに隣接している.内視鏡検査の需要に対して,物理的なスペースの拡張は構造上困難な状況である.そのためファイリングシステムのサーバーを3階の電子カルテサーバー室に移動(南海トラフ地震に伴う津波は3mと予測されており,記録を残す対策の一環でもある.)したり,リカバリー室は中央処置内の施設を利用する事で,スペースの確保と観察する看護師の業務削減を行っている.内視鏡器材については,リースで運用している.新製品に対応するため,5年の契約期間を2セットとし,適宜機種・内視鏡本数など現状に適するよう配慮している.また,ビルの構造上集中排気システムが取られており,換気が不十分になりがちであり,内視鏡消毒には過酢酸を使用し,生検検体用のホルマリンは,中央検査室で密閉容器に分注し,必要量のみ内視鏡室で保管して換気対象物質の発生を軽減している.

今後の内視鏡室のあり方について,大改修が可能であれば,ESDなど内視鏡治療の件数増加に対して,2チーム同時実施できるスペースの確保,検査結果の説明ができる個室,独立した洗浄室などのハード面とそれを利用する施行医,介助看護師の確保,教育上の観察者のスペースの確保など全体のスケールアップが課題と考えている.

 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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