GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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DIAGNOSIS OF AMPULLARY TUMORS USING ENDOSCOPIC RETROGRADE CHOLANGIOPANCREATOGRAPHY AND INTRADUCTAL ULTRASONOGRAPHY TECHNIQUES
Hiroki KAWASHIMA Eizaburo OHNOTakuya ISHIKAWAYoshiki HIROOKA
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2019 Volume 61 Issue 6 Pages 1248-1255

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要旨

十二指腸乳頭部(乳頭部)は胆管・膵管が開口するという他の消化管にはない解剖学的な特徴がある.胆膵管内進展をともなわない腺腫に対しての内視鏡的乳頭切除を含む局所切除についてはコンセンサスが得られつつあるが,癌についてはOddi筋層への浸潤の診断が困難であることを理由に,基本的には膵頭十二指腸切除術に準じた外科手術が勧められている.また,生検組織病理診断と切除後の最終病理診断がしばしば異なるという診断上の問題もある.内視鏡的乳頭切除術の可否については,内視鏡所見から腫瘍の悪性度を推察し,ERCP所見,管腔内超音波(IDUS)所見で進展度診断をして生検組織病理診断を参考にして決定するしかないのが現状である.今回は,内視鏡的乳頭切除術の適応診断を中心に乳頭部腫瘍(腺腫,癌)診断の実際について症例を提示しながら解説する.

Ⅰ 緒  言

十二指腸乳頭部(以下,乳頭部)は十二指腸下降部のほぼ中央かやや肛門側に位置し,胆道癌取扱い規約 1では乳頭部は“Oddi筋に囲まれた部分”と定義されている.その目安は胆管が十二指腸壁(十二指腸固有筋層)に貫入してから乳頭開口部までとし,乳頭部胆管(Ab),乳頭部膵管(Ap),共通管部(Ac),大十二指腸乳頭(Ad)を総称して乳頭部(A)とすると記載されている.このことから他の消化管と異なる特徴として,乳頭部の解剖を理解するには十二指腸の長軸方向と交わる方向に走行するAc,Ab,Apがあるという三次元的な把握が必要となる.乳頭部腫瘍の主なものは,上皮性腫瘍として前癌病変と考えられている腺腫と腺癌,非上皮性腫瘍としてNeroendocrine neoplasms(Neuroendocrine tumorやGangliocytic paragangliomaなど)が挙げられる.上皮性腫瘍は主にAdあるいはAc,Abの粘膜から発生する.乳頭部腫瘍の早期の内視鏡所見はAd原発とAcあるいはAb原発では異なる.Ad原発の腫瘍は顆粒状の上皮性変化をともなうAdの種大所見が主であり他の消化管の隆起性腫瘍と似た形態をとるのに対し,AcあるいはAb原発の腫瘍はAdが上皮性変化を軽度にともなうのみで腫大して開口部に乳頭状の上皮性変化所見を認めるのみ,あるいは開口部が発赤して軽度陥凹する所見であることが多い.

胆膵管内への進展をともなわない乳頭部腺腫についての局所切除(内視鏡的切除を含む)についてはコンセンサスが得られてきている.しかし,乳頭部癌の治療方法については胆道癌診療ガイドライン(改訂第2版) 2では,Oddi筋に達する癌(T1b癌)のリンパ節転移率が高く(9-42%),Oddi筋に浸潤するか否かの術前診断が困難であることから,腺腫内癌およびTisに対しては縮小手術も考慮されるが,乳頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除術が推奨されると記載されている.要するに治療方針を決定するために乳頭部腫瘍を診断する際には,非腫瘍か,腺腫あるいは癌か,非上皮性腫瘍かを鑑別する質的診断と胆膵管内進展の有無(進行癌では膵浸潤の有無など)の進展(浸潤)範囲診断が必要となる.今回は,内視鏡的乳頭切除術の適応診断を中心に内視鏡所見を含めたERCP手技と管腔内超音波(IDUS)を用いた乳頭部腫瘍(腺腫,癌)の診断について症例を提示しながら現状を解説する.

Ⅱ 内視鏡的乳頭部腫瘍の精査の実際

腫瘍,非腫瘍の鑑別

他の消化管腫瘍と異なり,乳頭部はもともと隆起として存在し,“正常な”乳頭部でも内視鏡所見は様々である.内視鏡所見で乳頭部の腫瘍性病変を疑う根拠となる所見は,異常と考えられる発赤,顆粒状変化をともなう隆起,陥凹などの上皮性変化や,上皮性変化には乏しいがAd部が腫大している所見であると考える.前医で発赤・腫大した乳頭部に対し生検を施行され,病理学的に腺腫と診断のうえ紹介いただいた症例でも当院で内視鏡を施行してみると発赤が改善しており,生検結果もgroup1という結果であることも経験する(Figure 1).なんらかの刺激による炎症により乳頭部の内視鏡所見は変化すること,そのときの生検組織による病理診断も困難であり間違いが起こりうることを認識する必要がある.逆に,内視鏡所見上,乳頭部が正常であっても一過性の黄疸を来たしているような症例では注意が必要である.経験上,総胆管内に胆泥あるいは結石がない場合,腺腫以下の病変では胆道系酵素の上昇は認めることはあっても,黄疸まで来たすことはほとんどない.内視鏡所見で乳頭部が正常と考えられても黄疸を認めた場合はAcやAbに小さな腺癌が存在する可能性を考慮する必要がある.胆道造影によるAc,Abの所見を確認し,IDUSにて胆管内の胆泥などの有無,Ab内の小さな乳頭状隆起の有無を検索し,胆泥など認めない場合には生検鉗子を胆管開口部から深く挿入してAc,Ab部分の生検を施行する必要がある.たとえ生検結果で腫瘍成分が証明されなくても経過観察は必要である.

Figure 1 

経過観察により非腫瘍と診断された症例.

前医の内視鏡所見にて発赤の強い乳頭部種大を指摘.生検組織病理診断で腺腫の診断にて紹介.

a:当院での内視鏡所見.乳頭部胆管(Ad)の上皮性変化に乏しいが一部突出した発赤隆起を認めた.同部から2材採取した生検病理結果はいずれもgroup1であった.

b:6カ月後の内視鏡所見.発赤した隆起は認められず炎症などによる変化であったと診断した.

内視鏡的乳頭切除術前の精査

当科の内視鏡的乳頭切除術の適応は,胆膵管内進展をともなわない腺腫または腺腫内癌(複数個の生検結果のうち腺腫と診断された組織を含む症例)としており,Adが原発と考えられ胆膵管内進展をともなわない腺腫あるいは腺腫内癌がいい適応であると考えている.適応となるべき病変を診断する契機は内視鏡所見と生検組織病理診断になる.生検組織病理診断と切除後の最終病理診断がよく異なることは周知の事実であり,当科の検討でも内視鏡的乳頭切除術前の生検病理診断が腺腫であった160例中,最終病理診断では38例が癌(腺腫内癌)と診断されるなど術前生検組織病理診断にて過小評価された症例が20.2%に認められた.腺腫成分と癌成分が混在する腫瘍においては深部に癌成分が存在することが多く,生検組織病理診断の限界であると思われる.発赤所見が強くなく,潰瘍形成をともなわないなど内視鏡所見と総合して慎重に適応を判断することが重要である.胆膵管内進展をともなわないことを診断するのはERCP所見とIDUS 3,EUS 4所見になる.IDUS,EUSでは低エコーを呈する腫瘍と胆膵管,十二指腸固有筋層,膵実質との関係により深達度,進展度診断を行う.内視鏡的治療の適応となる乳頭部病変は基本的には浸潤傾向のない病変であるので,深達度診断(膵実質・十二指腸への浸潤)は重要ではなく進展度診断(胆管・膵管内への進展)が中心となる.内視鏡的乳頭切除術前検査の実際を供覧する(Figure 2).スクリーニングの上部消化管内視鏡検査にて乳頭部腫瘍を指摘され紹介となった症例である.乳頭部の内視鏡所見は顆粒状変化をともなうAdの種大であり,Ad原発の乳頭部腺腫の典型的な所見と考えられる.膵管造影,胆管造影,IDUSにて管腔内進展がないことを確認し,生検を施行して検査を終了する.最近では膵管造影による膵炎発症のリスクを考慮し,CT所見にて主膵管の走行が把握可能(内視鏡的乳頭切除術後の膵管ステント留置に必要な情報)である症例は,胆管内からのIDUS所見で進展の有無を診断することは可能であるので膵管造影には固執しないことが多い.IDUS施行時にはまず十二指腸内を吸引したのちに内視鏡の送水ボタンを押し続けて十二指腸内腔を水で満たし内視鏡を肛門側に押し込んで胆管を直線化して走査するときれいな所見が得られる.IDUSはEUSとくらべ高周波での超音波画像であるので胆管・膵管内の小さな隆起性病変などの進展診断には適しているが,胆管から遠い部分は描出できない.また,IDUSの画像解像度でもT1a(粘膜内にとどまる)とT1b(Oddi筋に達する)は鑑別困難であるが,T1b以浅とT2(十二指腸浸潤のあるもの,Oddi筋をこえる浸潤所見あり)以深の診断は可能である(Figure 3).T2とT3(膵実質浸潤のあるもの)の診断は理論上EUSの方が優れている.

Figure 2 

十二指腸乳頭部腺腫症例(内視鏡的乳頭切除術適応例).

a:内視鏡所見は顆粒状変化をともなう大十二指腸乳頭(Ad)の種大であり,Ad原発の乳頭部腺腫の典型的な所見と考えられる.

b:ERCP所見上,胆管・膵管に進展所見を認めない.c,d,eは胆管内走査の管腔内超音波(IDUS)走査部を示す.

c:十二指腸壁外の胆管内走査によるIDUS所見.上部弓状の低エコー層(矢頭)は十二指腸筋層である.膵管内に進展所見を認めない.Pdは膵管を示す.

d:十二指腸内腔側の胆管内走査によるIDUS所見.十二指腸筋層の低エコー層(矢頭)がcの所見と反対の下側に来ていることがわかる.Oddi筋(矢印で示す低エコー層)の外側が保たれておりOddi筋外への浸潤がないと診断できる.

e:十二指腸内腔側の胆管内走査によるIDUS所見.dよりも下流側の走査.十二指腸内腔に水をしっかりためることによりきれいな画像を得ることができる.

f:内視鏡的乳頭切除9日後の内視鏡所見.切除後潰瘍底に遺残所見を認めない.最終病理診断はAdenoma,断端(-)であった.

g:内視鏡的乳頭切除6カ月後の内視鏡所見.切除後潰瘍はきれいに瘢痕化しており遺残所見を認めない.

Figure 3 

十二指腸乳頭部癌例(T2以深).

閉塞性黄疸を近医で指摘.胆道ドレナージ後に紹介となった症例.

a:前医の内視鏡所見.大十二指腸乳頭(Ad)は顆粒状変化に乏しく緊満感がある.易出血性であり癌を疑う所見である.生検病理診断も腺癌であった.

b:ERC所見上,前医のドレナージの影響も考慮されるが乳頭部胆管(Ab)に明らかな不整所見は認めなかった.c,dは胆管内走査の管腔内超音波(IDUS)走査部を示す.

c:三管合流部すぐ下流側の胆管内走査によるIDUS所見.胆管内に進展所見を認めない.

d:十二指腸内腔側の胆管内走査によるIDUS所見.矢頭は十二指腸筋層を示す.Oddi筋層が破壊されておりT2以深の癌であることが診断できる.矢印で示す部位で十二指腸筋層も断裂しているように描出されT3以深の癌である可能性も示唆された.

e:進展範囲診断目的に肝門部胆管から生検を施行(矢印)した.本症例は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行され,最終病理診断は中分化腺癌,patAcdp,pT3a,pN1,pPM0,pEM0であった.

生検組織による病理診断で癌と診断された症例について述べる.当科で術前の生検にて癌を含むと診断され内視鏡的乳頭切除術施行し,詳細な最終病理診断,6カ月以上の経過観察が行われた14例中,最終診断が癌であったのは10例(T1a癌以下8例,T1b2例)であった.4例の最終診断は腺腫であり病理診断が過大であったことになる.全14例が適応内病変(胆管・膵管への進展なし)であり最終的に外科的手術が必要となったのは2例であり(経過観察期間中央値1,372日 範囲551-4,417日),この2例とも根治的な外科手術が可能であった.残りの12例(85.7%)は内視鏡的にコントロール可能(追加焼灼など)であり,生検結果で癌成分を認めても,腺腫成分も認められ胆管・膵管内進展が認められなければ十分内視鏡的乳頭切除術の適応になると考えられる 5.この結果はあくまで腺腫成分をともなう癌という術前生検組織病理診断の症例のみの成績であり,生検を複数個とってすべて癌(このような症例は内視鏡所見上も強い発赤,潰瘍など認め内視鏡的乳頭切除術の適応とは考えがたく,T1b以上の癌であることがほとんどである)であるような症例ははじめから胆道癌診療ガイドラインにのっとり外科的手術を勧めるべきであると考えている.これらのことから,乳頭部腫瘍の質的診断時の生検は発赤の強い部分と弱い部分など場所を変えて最低でも2材は生検することが勧められる.

軽度胆管内進展症例の取扱いについて

症例を提示する(Figure 4).80歳代の女性.スクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査での発見例である.内視鏡所見上,発赤の強くない顆粒状のAdの種大所見であり腺腫の所見に矛盾しない.ERCP所見上は明らかな管腔内進展所見は認めなかったがIDUSを施行すると十二指腸壁外側の胆管(Bd)壁に小さな隆起を認め,この所見は十二指腸壁内側のAbまで連続していた.3材とった生検組織病理診断の結果はいずれも腺腫の診断であった.胆管内進展を認める乳頭部腺腫で内視鏡的乳頭切除術の適応外と診断されたが,高齢であり,患者の希望も強かったために遺残による追加手術,追加焼灼の可能性について承諾を得た上で内視鏡的乳頭切除術を施行した.切除直後の内視鏡所見にて胆管開口部に一致して発赤調の隆起が認められたため追加焼灼し胆管・膵管にステント留置して手技を終了した.最終病理診断は高分化型腺癌(T1a)で垂直断端がadenomaで陽性?という結果であった.追加焼灼施行しているのでそのまま退院したが,6カ月後の経過観察時に胆管開口部に隆起性病変が認められ,生検組織病理診断は腺腫であった.遺残病変と診断し追加焼灼を施行した.12カ月後,24カ月後の経過観察時には内視鏡所見上も生検組織病理診断上も再発は指摘されていない.当院では,遺残や再発病変の病理診断が癌であれば基本的には手術を勧めているが,胆管内進展が軽度であり追加焼灼が可能な範囲にとどまっている腺腫の場合は内視鏡的に追加焼灼を施行する方針としている.この症例程度の胆管内進展であれば内視鏡的にコントロールすることは可能であることが多いが,軽微であっても胆管内進展をともなう症例の最終病理診断は癌となることが多いことにも留意が必要である.術前に最終診断が癌となる可能性,追加手術などの可能性についてもしっかりと説明して納得してもらう必要がある.

Figure 4 

十二指腸乳頭部腺癌例(胆管内軽度進展,T1a).

80歳代の女性.スクリーニング目的の上部消化管内視鏡検査での発見例である.

a:内視鏡所見上,発赤の強くない顆粒状の大十二指腸乳頭(Ad)の種大所見であり腺腫の所見に矛盾しない.3材とった生検組織病理診断の結果はいずれも腺腫の診断であった.

b:ERCP所見上は明らかな管腔内進展所見は認めなかった.c,dは胆管内走査の管腔内超音波(IDUS)走査部を示す.

c:十二指腸壁外側のIDUS所見上,胆管(Bd)内に小さな隆起性病変(矢印)を認め胆管内進展ありと診断された.Pdは膵管を示す.

d:十二指腸内腔側のIDUS所見でも上記の所見は連続して認められた.矢頭は十二指腸筋層を示す.

e:内視鏡的乳頭切除術の適応外と診断されたが,高齢であり,患者の希望も強かったために遺残による追加手術,追加焼灼の可能性について承諾を得た上で内視鏡的乳頭切除術を施行した.切除直後の内視鏡所見にて胆管開口部に一致して発赤調の隆起が認められた(矢印)ため追加焼灼し胆管・膵管にステント留置して手技を終了した.最終病理診断は高分化型腺癌(T1a)で垂直断端がadenomaで陽性?という結果であった.

f:6カ月後の内視鏡所見では胆管開口部に隆起性病変が認められ,生検組織病理診断は腺腫であった.

g:遺残病変と診断し,ガイドワイヤーを胆管・膵管に挿入して追加焼灼を施行した.

h:内視鏡的乳頭切除24カ月後の内視鏡所見,生検組織病理診断でも再発所見を認めなかった.

外科的手術を要する乳頭部腫瘍の診断

上述の適応をこえた症例が手術の適応となる.内視鏡所見のみで明らかに潰瘍形成などしており進行癌と診断できる症例の場合は胆道ドレナージと胆管上流側への進展の有無の診断が中心となる.膵頭十二指腸切除術の場合の胆管切離線は右肝動脈と胆管が交差する高さ程度であるので,それよりも上流に腫瘍の進展がないことをIDUSと経乳頭的胆管生検で診断する必要がある.左右胆管合流部は生検が比較的容易で解剖学的にもわかりやすい場所であるので,この部位を生検することが多い(Figure 3).内視鏡的乳頭切除術目的に紹介いただき術前精査の結果,膵頭十二指腸切除術を施行した症例を提示する(Figure 5).内視鏡所見上顆粒状の上皮性変化をAdに認めるが,開口部がやや陥凹しておりAd原発とは考えにくい所見である.ERCP所見にてAbから胆管(Bd)に隆起性病変が認められ,IDUSでも胆管内に充満する腫瘍として描出された.術前の生検病理診断は腺腫であったが,胆管内進展がしっかりあり原発がAbと考えられる所見であったため外科的切除の方針とした.最終病理診断は高分化型腺癌T1b,patAbBd,ly0,v0,pN0であった.この症例のように内視鏡所見上AcやAbが原発と考えられる乳頭部腫瘍はAd部の内視鏡所見に明らかな悪性所見を認めなくても胆管内進展をともなっていることが多く,最終病理診断が腺癌となることも多いので慎重に内視鏡的切除の適応を考慮する必要がある.

Figure 5 

乳頭部胆管(Ab)原発の十二指腸乳頭部腺癌例.

a:内視鏡所見上,顆粒状の上皮性変化を大十二指腸乳頭(Ad)に認めるが,開口部がやや陥凹しておりAd原発とは考えにくい所見である.生検病理診断は腺腫であった.

b:ERCP所見にて乳頭部胆管(Ab)から胆管(Bd)に隆起性病変が認められた.cは胆管内走査の管腔内超音波(IDUS)走査部を示す.

c:IDUSでも胆管内に充満する腫瘍として描出された.胆管内進展を認め原発がAbと考えられる所見であったため外科的切除の方針とした.最終病理診断は高分化型腺癌T1b,patAbBd,ly0,v0,pN0であった.

Ⅲ まとめ

当科の経験を基にして,主に内視鏡的乳頭切除術の適応診断について述べた.周知のごとく進行した乳頭部癌の予後はよくないので早期発見が必要である.黄疸発症の乳頭部癌が内視鏡的切除の適応になることはほとんどないため,スクリーニングの上部消化管内視鏡検査時に乳頭部を観察し,種大などの所見を認めた場合は積極的に生検を追加することが必要である.また,病理診断も困難であり,質的診断において最も大事な初期情報は後方斜視鏡による正面視された乳頭部の内視鏡所見であるため,直視鏡での観察が不十分である場合は,患者さんに説明し内視鏡を交換して観察させていただく気概も必要であると考える.T1a以下の乳頭部癌であれば,日本のhigh volume centerであればmortality rateはほぼ0%で根治可能と考えられる.このことを考慮し内視鏡的乳頭切除に固執することなく,内視鏡所見をしっかりと吟味し症例に応じて慎重に適応を判断するべきである.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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