GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
STANDARD READING METHOD OF COMPUTED TOMOGRAPHIC COLONOGRAPHY (WITH VIDEOS)
Koichi NAGATA Kenichi UTANOShungo ENDOKazutomo TOGASHITakahisa MATSUDAYutaka SAITO
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML
Supplementary material

2019 Volume 61 Issue 6 Pages 1256-1263

Details
要旨

大腸CT検査は,健診および精密検査を大腸内視鏡検査で行うことが困難な場合に補完する検査法である.大腸内視鏡検査の実施が適さない場合,または内視鏡検査で全大腸の観察ができなかった場合には大腸CT検査の実施が推奨されている.

標準的読影法の一つ目としてのprimary 3D readingは,内視鏡類似像によるfly-throughで腸管内腔を飛行するようにして粘膜面を観察し病変を拾い上げる.二つ目としてprimary 2D readingは2次元画像で直腸から腸管の内腔を直腸から順に近位側に向けて腸管粘膜面を追跡するlumen tracking法で病変を拾い上げる.両読影法ともに病変を疑った場合,2次元・3次元画像の両方を活用し指摘領域が病変として矛盾しないか判断する.

エビデンスに基づいた標準的読影法に基づいて読影を行うことは精度を担保するうえで重要である.

Ⅰ はじめに

大腸CT検査(CT colonography)は仮想内視鏡検査とも言われるように大腸内視鏡検査に類似した動画が得られる(Figure 1電子動画 1).一方,CT装置で撮像し,注腸X線検査のような注腸類似像も得られることから放射線画像診断のイメージが先行する場合もある(Figure 2電子動画 2).大腸CT検査は新しい大腸検査法であり,実際には大腸内視鏡検査とも注腸X線検査とも似て非なる検査である.したがって,大腸CT検査の診断方法は従来の検査の診断とはまったく異なる点に注意が必要である.

Figure 1 

Fly-throughにおける正常な内視鏡類似像.

電子動画1

Figure 2 

正常な注腸類似像.大腸の走行や病変の位置情報の把握に有用である.

電子動画2

大腸CT検査は多列CT装置(16列以上を推奨)で撮影を行い,撮影データから画像を構築し,その画像を読影することにより大腸腫瘍性病変を検出する検査法である.腸管内残渣を病変と区別するために造影剤を経口服用する腸管前処置(タギング)を行う.続いて経肛門的にガスを注入し大腸を拡張してからCT撮影を行う.撮影データから,2次元画像の多断面再構成像(MPR像)と3次元画像を構築し診断する(Figure 3).読影に用いる3次元画像は内視鏡類似像と注腸類似像であり,内視鏡類似像は大腸管腔を飛んでいるように観察するfly-throughで読影に用いられる(Figure 1電子動画 1).注腸類似像は病変の位置の把握に有用である.

Figure 3 

読影画面.左側に3種類の2次元画像(サジタル像,コロナル像,アキシャル像),右側に3次元画像(内視鏡類似像)が表示されており,診断には両方の画像を使用する.S状結腸に28mmの腫瘍性病変を認める.2次元画像と3次元画像の両方を活用し,病変の拾い上げと病変の同定を行う.

Ⅱ 診断精度

大腸CT検査による大腸腫瘍性病変の診断精度についてアメリカのNational CT Colonography Trial(ACRIN6664) 1をはじめドイツ,イタリア,フランスなど欧米主要国から十分な精度があることが報告されている(Table 1 1)~8

Table 1 

大腸CT検査のPhase Ⅱ以上の臨床試験.

日本でも,便潜血陽性者を主な対象として実施された2つの精度検証(Phase Ⅱ)が報告されている(Table 1 1)~8.本邦初の多施設共同臨床試験Japanese National CT Colonography Trial(JANCT;UMIN試験ID,UMIN000002097;ClinicalTrials.gov ID,NCT00997802)はACRIN6664に次ぐ世界第2位の規模で実施された.この研究で6mm以上の大腸腫瘍に対する患者別の感度は87%,特異度は92%と良好な結果であったことが報告されている 7.続いて,800mLの腸管洗浄剤を用いた低用量前処置による大腸CT検査の精度評価(UMIN試験ID:UMIN000006665)が実施された.この研究報告でも,6mm以上の大腸腫瘍に対する患者別の感度は90%,特異度は93%と通常用量(2,000mL)前処置で実施されたJANCTの結果と同様に良好な成績であった 8.2つの試験共に,消化器内視鏡専門医による同日の大腸内視鏡検査が全例で実施され,内視鏡診断をリファレンススタンダードとしている.このことから,日本の内視鏡検査と比較しても,大腸CT検査の精度検証は良好な結果であったことが分かる.大腸内視鏡検査は大腸腫瘍性病変の精検法・治療法として中心的な立場であることは今後も変わらないものの,大腸CT検査が内視鏡検査を補完する検査法として普及しつつある.

Ⅲ 検査の位置づけ

ヨーロッパではEuropean Society of Gastrointestinal EndoscopyとEuropean Society of Gastrointestinal and Abdominal Radiologyが大腸CT適応ガイドラインを出しており,検査目的別に大腸CTの推奨内容が明示されている 9.大腸内視鏡検査の実施が適さない場合,または内視鏡検査で全大腸の観察ができなかった場合には,十分なエビデンスがあることを根拠に大腸CT検査の実施を強く推奨している.一方で注腸X線検査は精度を担保するエビデンスが不足しているため,実施すべきではないと付記された.

アメリカではAmerican Cancer Society,US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer,およびAmerican College of Radiologyが2008年に大腸がん検診ガイドラインを策定した 10.この中で大腸CT検査は大腸腫瘍の診断が可能な検診検査法として収載されている.さらに,2016年にUS Preventive Services Task Forceも大腸CT検査を大腸がん検診法の一つとして推奨している 11

日本では日本消化器がん検診学会による委員会報告として公表された「精密検査の手法として大腸CT検査の位置づけおよび必要条件と課題」において,「精密検査を全大腸内視鏡検査で行うことが困難な場合は,大腸CT検査あるいは,S状結腸内視鏡検査と注腸X線検査の併用法のいずれかを実施する.」という趣旨に変更することが妥当であると提言が出された 12.現実に,大腸CT検査が既に広く臨床で使用されていることも全国調査で報告・確認されている 13

Ⅳ 読影の基本方法

大腸CT検査は精度検証が完了してからまだ年月が浅い新しい検査法であるため,精度が確立している標準的な読影方法によるトレーニングを積むことが重要である.読影医に求められる基本的な内容は,大腸内視鏡検査で病変の有無が確認されている175例程度のトレーニング症例データを用いて読影トレーニングを経験すること 14,標準的読影法として内視鏡類似像(fly-through)による3次元画像と2次元画像(MPR像)の両方を読影に用いることである(Figure 3 15),16

読影の基本方法として3次元画像から始める方法(primary 3D reading),2次元画像から始める方法(primary 2D reading)の2つの方法があげられる.

Primary 3D readingでは,内視鏡類似像によるfly-throughで腸管内腔を飛行するようにして粘膜面を観察し読影を進める.Fly-throughで病変が疑われる領域を拾い上げる読影作業を2体位ともに行う.病変が疑われた場合には,2次元画像でその領域の性状(内部CT値や均一性など)・形状・大きさなどを判定する(電子動画 3 17.病変の性状としては領域内のCT値が軟部組織相当であること,内部にガスの混入やタギングによる高いCT値を持つ残渣を含まないことなどを確認する.形状や大きさを2体位の画像で比較し,ともに同様であることも確認する.

電子動画3

Primary 2D readingは2次元画像のアキシャル像で直腸から腸管の内腔の粘膜面に死角を作らないように直腸から順に近位側に向けて腸管粘膜面を追跡していくlumen tracking法にて病変の拾い上げを行う.病変が疑われた場合には,3次元画像で指摘領域が病変の形状として矛盾しないか確認する.

Primary 3D readingは内視鏡検査に近い画像が得られ小さな病変の指摘が容易である.そのため,読影方法として比較的簡便で読影技術の習得が早い.Primary 2D readingは腸管内に固形残渣が多い場合や腸管拡張の悪い場合に効率的で短時間に読影できる特徴がある 18),19.ただし,primary 3D readingでもprimary 2D readingでもその診断精度には差はないと報告されている 20

Ⅴ 読影のコツ

1)ポリープと偽病変の鑑別

腸管内の残渣は腫瘍性病変との鑑別が問題となることがある.1体位だけではその病変が本当に病変かどうか判断できないことがある.ポイントとして,腸管内残渣は体位により移動することが多いこと,有茎性病変(Ⅰp病変)を除いて病変は移動しないことによって鑑別を行う(Figure 4).Ⅰp病変のstalk(茎)は違う体位で観察することにより明瞭になることがあり,また広基性病変(Ⅰs病変やⅡa病変など)との鑑別も容易となる(Figure 5).

Figure 4 

腫瘍性病変.上段は背臥位撮影,下段は腹臥位撮影.左側はサジタル像,右側は内視鏡類似像.直腸の15mmのⅠs病変.病変の位置が2体位で同じであること,内部CT値が軟部組織程度で均一であることが確認できる.

Figure 5 

腫瘍性病変.上段は背臥位撮影,下段は腹臥位撮影.左側はサジタル像,右側は内視鏡類似像.直腸の15mmのⅠp病変.病変の位置が2体位で重力方向に移動していること,背臥位のサジタル像でⅠp病変の茎が確認できる.

2体位の両方の画像で同じ部位に病変が指摘できるか確認することも大切である.指摘した領域が片体位でのみ観察される場合や2体位で存在部位が異なる場合には,残渣であると確認できる(Figure 6).

Figure 6 

腸管内残渣.上段は背臥位撮影,下段は腹臥位撮影.左側はアキシャル像,右側は内視鏡類似像.内視鏡類似像では病変のような隆起領域が観察される.アキシャル像では指摘した領域が重力方向に移動していること,病変の茎が確認できないこと,内部CT値が水溶性造影剤により高く,かつ内部に気泡を認めることから,病変ではなく残渣であることが分かる.

2) 内視鏡類似像や注腸類似像以外の3次元画像の使用について

その他の3次元画像として,管腔を切り開いて平面表示した大腸展開像(Virtual Gross pathology,仮想展開画像)も日本では特異的に使用されている.大腸展開像は管腔を切り開いた画像である.大腸展開像による読影精度に関するPhase Ⅱ以上の前向き検証は報告されていない.曲面を平面に画像を加工することによる歪みが強くひだや病変の鑑別が困難となることがあり,病変の拾い上げには適していない.標準的読影に比べて診断精度が劣る可能性が示されており,習得するまでのラーニングカーブも不明である 21),22.読影に使用するメリットが明らかでない現時点では,実地臨床で大腸展開像による診断を行うことは避けるべきである.

Ⅵ おわりに

大腸CT検査は,健診および精密検査を大腸内視鏡検査で行うことが困難な場合に補完する検査法として位置づけられる.ただし,必要な患者を適切に効率よく大腸内視鏡検査に橋渡しするためには,エビデンスに基づいた標準的読影法に基づいた大腸CT検査を実施することが必須であり,そのためには今後の標準化が重要である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
feedback
Top