GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2019 Volume 61 Issue 6 Pages 1348-1351

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概要

沿革・特徴など

昭和22年12月に日本赤十字社福岡県支部に付属する福岡診療所として開院し,昭和27年4月に福岡赤十字病院と改称した後,内科,外科,及び,産婦人科による50床の病院として発足した.四期にわたる外来棟・病棟の建築と増改築を経て511床へと発展し,平成25年に本館と北館で構成される現在の病院体制が完成した.全36診療科の総合病院として福岡市南部,及び,周辺地域における急性期病院としての役割を担っている.平成28年度は,外来新患者数29,451人,外来新患率12.8%,1日平均外来患者数822.4人,年間の延べ入院患者数173,930人,救急車受け入れ5,876台(応需率91.5%)であった.また,災害拠点病院としての役割も担い,阪神・淡路大震災,福岡西方沖地震,東日本大震災,熊本地震,九州北部豪雨災害など国内の救護活動に加え,中東アジア・アフリカの被災・紛争地域への医師・看護師派遣など幅広い活動を行っている.当院の理念は「地域とともに世界を視野に 信頼される最高の医療を」である.

組織

内視鏡室は外来部門の一部として位置づけられているが,多くの業務は消化器内科が管理・運営している.また,食道静脈瘤の内視鏡治療は肝臓内科,胆道系疾患に対する内視鏡検査・治療は外科,気管支鏡は呼吸器内科が実施している.看護師は外来部門に所属するが,放射線科領域で勤務する14名のうち7名が内視鏡室を担当する.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

内視鏡室は本館1階にある放射線部門の一角にあり,独立した検査室4室(68.60m2)と記録室,受付,待合室,面談室,リカバリー室,洗浄室,更衣室,多目的トイレなどを備えており,総面積215.82m2である.隣接するX線透視室にも内視鏡システムを常設し,バルーン式小腸内視鏡,イレウス管やステント挿入,ERCPや気管支鏡などを実施している.また,北館1階の人間ドック健診センターにも内視鏡専用の検査室(検査室7.37m2,洗浄室8.58m2,リカバリー室24.48m2)を備えている.内視鏡画像は,画像ファイリングシステム(NEXUS)で診断レポートを作成し,院内すべての電子カルテで閲覧することができる.また,各検査室の内視鏡画像を記録室の大型モニターと受付の小型モニターに配信して常時確認できるので,各検査室の状況が把握しやすく,指導医の監督や看護師の検査準備に役立てている.

当院は消化管出血や腸閉塞など緊急入院となる疾患が多いが,夜間や休日に当直医が内視鏡的治療を要すると判断した場合は,オンコール体制で医師1名,内視鏡室看護師1名が24時間体制で対応する.また,医師1名での対応が困難である場合は,ペアを組んでいる応援医師と連携して対応する.内視鏡室は救急部門と隣接しており,ベッド移動が必要な重症患者は受付や待合室を通過せずに,一般患者と交わることなく検査室に入退室することができる.また,本館3階の集中治療室との動線も一般の廊下を通ることなく,専用のエレベーターから速やかに搬入搬出することができる.ちなみに,平成29年度の当科入院患者は1,034名であったが,消化管出血17.2%,腸閉塞6.6%であった.

リカバリー室はベッド4台であり,咽頭麻酔や静脈麻酔用のルート確保などの処置用ベッドと兼用している.受付と検査室を結ぶ通路の途中に配置し,スタッフが常に気を配ることができ,生体モニターを使用してリカバリー中の異常にも迅速に対応できるようにしている.

各検査室は,壁と引き戸で仕切られプライバシーに配慮している.また,患者の出入口対側はカーテン仕切りとして洗浄室に直結し,内視鏡と患者の移動ルートが交わらないようにしている.多目的トイレは折りたたみ式簡易ベッドを備えているので浣腸が可能であり,車イスのままでも入室ができる.

内視鏡的に切除した組織標本を直ちにホルマリン固定するため,洗浄室の一角に換気装置を設置して作業場を固定し,室内の空気中ホルマリン濃度を定期的に測定している.また,洗浄機4台にもそれぞれに換気装置を設置し,揮発性薬品による健康被害が発生しないように配慮している.

スタッフ

(2018年10月現在)

医   師:指導医2名,専門医2名,その他スタッフ4名,研修医1~3名

内視鏡技師:Ⅰ種8名

看 護 師:常勤14名,非常勤1名,事務職1名,看護助手1名

設備・備品

(2018年10月現在)

 

 

実績

(2017年4月~2018年3月)

 

 

指導体制,指導方針

当院は単独型臨床研修病院であり,1年次と2年次の研修医が各12名ずつ臨床研修を行っている.また,協力型として1年次研修医1~2名を九州大学病院から受け入れている.1年次は6カ月間の内科ローテートの中で,消化器内科に配属されるのは9名である.医師としての基本的な診療行為の経験や知識を高め,チーム医療の中での中心的役割を担う医師としての資質を養うことが最優先であるが,内視鏡診療については見学とカンファレンスへの参加により研修を開始する.また,内視鏡治療を受ける患者の副主治医として上級医師の患者面談に立ち会い,インフォームドコンセントや病棟業務を経験する.消化管出血に関しては,緊急入院時の初期対応から問診や診察,検査データから出血部位を推定し,内視鏡的止血術を実施する過程を研修する.早期癌に対する内視鏡治療では,局注を行う介助者として治療に参加し,術前術後の病棟業務では副主治医となる.また,上部消化管トレーニングモデルを用いて内視鏡操作を体験し,内視鏡診断への興味を高める.1年次は見学と局注や生検の処置具を操作することまでを原則としているが,上級医の検査終了間際に交代して内視鏡操作を経験することも可能である.

2年次は選択制により消化器内科をローテートし,上部消化管内視鏡検査の初期トレーニングを受けることが可能である.鎮静下での咽頭挿入から十二指腸下行脚までスコープを無理なくすすめることから開始し,粘液の除去,適切な空気量の調節,アングル操作,網羅的な観察と撮影のテクニックを上級医の監督下で学ぶ.トレーニング期間は1カ月から最長6カ月であるが,多くの場合は2カ月間で100例程度の上部消化管内視鏡検査を経験させている.研修医同士での上部消化管内視鏡検査の体験も可能であるが,上級医師が必ず立ち会うようにしている.

消化器内視鏡専門医を目指す専攻医(レジデント)は,最初の2カ月間で上部消化管スクリーニングが単独かつ非鎮静下でも実施可能なレベルになることから開始する.その後,シグモイドスコピーから下部消化管内視鏡のトレーニングを開始する.その際,大腸内視鏡トレーニングモデルを活用することを推奨している.上部消化管の内視鏡的止血術は,原則的に6カ月間は上級医師の指導下で研鑽を積み,十分な経験の後に単独実施へと移行する.また,大腸ポリープEMRについては1cm未満の有茎ないし亜有茎性ポリープから開始し,局注やスネアリング,クリッピングの手技を習得する.スコープの洗浄・消毒に関する知識も重要であり,手洗い洗浄や全自動洗浄機の操作も経験するように指導している.

2年目以降の専攻医は,基本的な内視鏡検査や止血術,EMRについては単独で実施して多数の症例を経験する.また,スクリーニング検査においては盲点となりやすい部位を意識的に観察・撮影する技能が必要であり,色素散布,画像強調,拡大観察,超音波内視鏡などの技術も習得する.病変の病理組織学的な構築を理解し,適切な生検部位を認識する能力と狙撃生検の技術など専門医としての技術に磨きをかける.ESDに関しては,十分な介助の経験を経て,安定した止血手技と大腸内視鏡の操作手技,EMRやポリペクトミーを習得したと考えられる時点から,専門医の介助・指導の下で開始する.ESDの単独実施は,原則的に専門医のみとしている.

毎週1回内視鏡画像カンファレンスを行い,内視鏡所見と生検診断の整合性を検討するとともに,必要な場合は再検査や病理医とのディスカッションを指示している.また,腫瘍性病変に対する内視鏡治療後の病理診断を確認し,追加治療の必要性など検討している.更に,毎月1回外科と合同で術後症例カンファレンスを開催している.病診連携の一環として年3回の消化器病カンファレンスを開催し,地域における消化器病診療のレベル向上に寄与している.

現状の問題点と今後

新病院の内視鏡室が開設されて5年経過したが,現状の問題点は①リカバリーベッドの不足,②大腸内視鏡の腸管洗浄剤を服用するスペースがないこと,③トイレ数の不足,④検査後の説明に使用する面談室が1室しかないこと,⑤専攻医や研修医が増えて記録室が手狭になったことなどが挙げられる.これらは内視鏡室の総面積が狭く,当面の間は改築工事をすることも困難であり,現状のハードで何とか工夫しながら対応しなければならない.

内視鏡機器については,オリンパス社とのVPP契約で5年毎に更新が行われるため,スコープの老朽化や調整不備で悩まされることは少なくなった.また,生検鉗子やスネア類はディスポ製品を採用し処置具を介した感染管理は比較的容易になったが,年間使用数の契約を結ぶことによりコスト削減を図っている.検診センターの内視鏡室は,レーザー光を搭載したフジノン社製の経鼻内視鏡を採用し,受診者の負担が軽減し検査画質の向上が得られた.検査数の増加とともに検査室を1室から2室に増設する計画があるが,日頃から緊急患者への対応に追われる常勤医のみでは限界があり対策が必要と考えている.

2018年度にカプセル内視鏡を導入したが,慢性貧血や消化管出血,慢性腹痛などへの新しい診断的アプローチ法として広報誌などで近隣の医療機関に情報を発信している.最近では胃癌の減少と大腸癌の増加が報告され,当院でもその傾向を実感している.午前中の検査では大腸検査を段階的に増やしながら,午前と午後のバランスを考え,時間内に検査が終了するように努力している.閉塞を伴う進行大腸癌の緊急入院が増加しており,これまでは経肛門的イレウス管で対応していたが,消化器外科と連携をとりながらステント治療も開始している.

新専門医制度への移行に伴いJED projectへの参加が必須となるため,NEXUSファイリングシステムのバージョンアップを検討している.当院では消化器内視鏡の技術向上のために必要なハードは取りそろえているので,充実した内視鏡診療を行うとともに,多くの消化器内視鏡専門医を育成して社会に貢献したいと考えている.

 
© 2019 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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