GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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2020 Volume 62 Issue 10 Pages 2325-2329

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概要

沿革・特徴など

おなかクリニックは八王子市の中心,JR八王子駅北口駅前に位置している.八王子市は,都心から西へ40km,面積186.38平方キロメートル,人口は住民基本台帳人口が561,622人(内外国人住民13,256人)の東京多摩地区最大の市町村である.21の大学のキャンパスがあり,学園都市でもある.古くは絹織物で栄えた甲州街道の宿場町であった.新宿まで電車で40分あまりである.盆地状の地形で,夏暑く,冬寒い.東京で降雪があると必ずや八王子駅前の大雪の様子がテレビ中継される.

JR八王子駅は,市内全域からのバス路線が集中しており,患者は市内全域から集まる.また中央線,横浜線,八高線,京王線の乗り換え駅でもあるため,おなかクリニックの診療圏は,近隣の日野市,立川市,国立市,国分寺市,多摩市,稲城市,町田市,昭島市,あきる野市,福生市,羽村市,青梅市,日の出町,檜原村,相模原市北部,山梨県東部など広範囲である.

2005年に,個人事業として消化器内視鏡,ソケイヘルニアと痔の日帰り手術の専門クリニック「村井おなかクリニック」を京王八王子駅前に開業した.翌年医療法人化し,東京都府中市に分院として「津久井内科おなかクリニック」を開設した.このクリニックは現在分離独立している.2011年に閉院した個人病院の跡地に移転した.6階建てビル1棟にて診療を行っている.名称を「おなかクリニック」として再出発した.当初8床の有床診療所であったが,今年1月より無床となった.

開業当初より,診療と経営の分離をコンセプトとしており,コンサルタント会社より,非常勤で事務長を派遣してもらい,開業準備からその後の運営までを担当してもらった.2013年にコンサルタント会社が撤退し,現在は役員と常勤の事務長と役職者により運営を行っている.2011年から常勤医2名体制であったが,本年4月より3名体制となった.

クリニックであるため,非常勤医が多い.現在大学病院の6医局に派遣をお願いしている.外来は5ブース,内視鏡検査室は4室にて診療を行っている.

16列CT検査装置1台,超音波検査装置2台があり,常勤の診療放射線技師1名と超音波検査技師2名により,年間CT検査2,122件,大腸CT検査175件,超音波検査1,972件を行っている.

赤外線分光分析装置(呼気中13CO2分析装置)POCone2台により,年間3,000件あまりの尿素呼気試験を実施し除菌治療も毎年1,000例前後に行っている.

2014年に開院十周年記念事業として,胃がん撲滅キャンペーン「二十歳のピロリ菌チェック」を開始し,NPO法人二十歳のピロリ菌チェックを推進する会(ハタピの会)を設立し,若年者のピロリ菌スクリーニングを多摩地区中心に積極的に推進している.

組織

おなかクリニックにおける内視鏡検査室は,6フロアあるクリニックの3階を検査室とリカバリーとして使用し,4階を患者用ロッカールーム,大腸内視鏡前処置スペース,処置用トイレとして使用している.組織としては,独立せず,スタッフは外来部門とローテーションで担当している.現在は院長が責任者として管理しているが,近い将来常勤医が内視鏡センター長に就任予定である.

検査室レイアウト

 

 

 

当内視鏡室の特徴

「苦痛の少ない内視鏡検査」を提供することが開院以来の当院のコンセプトである.9割以上の検査で,セデーションを実施している.全例で覚醒するまで酸素飽和度の測定を行い,必要に応じて血圧測定,心電図モニターを実施する.

2017年よりオリジナルのデータベースであるOnaka Endoscopy Database(以下OED)を導入した.これにオリジナルのClinic Patient Positioning System(以下CPS)を連動させ安全で効率的な運用に役立てている.

実際の運用方法は,来院した内視鏡検査の患者には,スマートフォン端末(以下スマホ)を貸与し,院内各フロアに設置されたビーコン(発振器)の電波をスマホがキャッチし院内wifiをつかって患者のいるフロアとフロア内の位置を把握するものである.中央のスタッフステーションには,50インチの大型モニターが設置され,OEDに連動したCPSの情報が表示されている(Figure 1).このモニター上では,検査前・検査中・検査後の患者の氏名とIDと貸与しているスマホの番号,検査室では検査開始からの時間,14あるリカバリーブースでは検査終了時からの経過時間が表示される.ブースが淡く緑色に表示されているのは,検査前の患者で,白地が検査後60分以内のリカバリー中の患者,赤く表示されているのは,検査終了から60分を経過した患者である.60分経過時にはチャイムが鳴るように設定されている.覚醒がわるくリカバリーを延長する場合は,20分ごとに追加が可能であり,5番ブースは60分のリカバリー時間からさらに27分が経過していることを表している.色のついた〇印は,患者のリスクを4段階に分けて表示している.

Figure 1 

Clinic Patient Positioning System(CPS)の表示画面.

CPSの導入により,検査前,検査中,検査後リカバリーの患者を一目で把握できるようになり,1日30~40件の内視鏡検査を安全かつ効率よく実施する上で,極めて有用なツールとなっている.

4室ある内視鏡検査室には,電子カルテ端末2台,OED用iPad1台,PACS端末1台が配置されている.

スタッフ

(2020年4月現在)

医師:常勤3名(消化器外科医1名,肛門外科医1名,消化器内科医1名),非常勤31名(消化器外科医19名,消化器内科医12名)外来のみ担当医師は除く

看護師:18名(常勤10名,非常勤8名 内内視鏡検査技師3名)

臨床検査技師:7名(常勤6名,非常勤1名 内内視鏡検査技師2名)

診療アシスタント(看護助手):常勤5名,非常勤6名.内視鏡検査室専従

医療事務:常勤1名.内視鏡検査室専従

看護師,臨床検査技師については,およそ半数がローテーションで内視鏡検査室を担当する

設備・備品

(2020年7月現在)

 

 

実績

(2019年1月1日~2019年12月31日)

 

 

指導体制・指導方針

ほぼすべての医師が,日本消化器内視鏡学会認定医・専門医の資格を取得している.現在までに大腸内視鏡検査の経験の浅い医師3名が,当院でOn The Job Training(OJT)を受けて検査手技に習熟した実績がある.

内視鏡診療については,非常勤の医師には,勤務先の大学病院,地域の中核病院と同じレベルの診療をお願いしている.

オリジナルの内視鏡診療データベースOnaka Endoscopy Database(OED)を用いて,各医師の過去3カ月の大腸内視鏡検査における盲腸到達時間と腺腫発見率Adenoma Detection Rate(ADR)をリアルタイムで把握することが可能である.

上部消化管内視鏡においては,生検率を10%前後とするようにお願いをしている.

経時的には,上部消化管内視鏡における生検率は低下傾向,下部消化管内視鏡における切除率は上昇傾向にあるが,企業健診のリピーターが多いこともあり大腸ポリープの切除率は30%に届かないのが現状である.

現状の問題点と今後

開院以来,品質管理の行われた医療を提供することをコンセプトとしているが,消化器内視鏡診療におけるクオリティーコントロールは,とくに多くの非常勤医師が関わる当院では極めて困難である.困難ではあるが数値化できるものとして,上部消化管内視鏡では生検率,下部消化管内視鏡においては盲腸到達時間と切除率,ADRを指標として,質の管理を行っている.

大腸ポリープの切除率は30%超を目標としている.

また多くの検査を安全かつ効率的に実施するためにIT化をすすめ,OEDとCPSを導入した.まだ多くの改善点があるが有用なツールである.

消化器内視鏡検査,とくに大腸内視鏡検査の需要は今後も増え続けるものと予想される.これに応えるために,安全かつ効率的な内視鏡検査体制を整備していかなくてはならない.そのためには,AIを用いた診断補助も含めITの活用が重要である.

本稿執筆中にCOVID-19感染拡大があり,非常事態宣言が出された.クリニックにおいては,患者数が激減し,内視鏡検査のキャンセルも続出した.感染した医療関係者も多く報道されている.亡くなられた方々のご冥福を祈り,治療中の方々のご快癒を祈念する.当院でも院内感染発症のリスクを回避するため,内視鏡診療を緊急例以外は,全面的に休止した.緊急事態宣言解除後に速やかに検査を再開する予定であるが,キャンセル状況,現在の予約状況からみて上部消化管内視鏡検査は以前のような件数には戻らないのではないかと予想している.今後内視鏡専門クリニックは,大腸内視鏡検査が主体となっていくものと思われる.

日頃,おなかクリニックの内視鏡診療を支えてくれている多くの医師,スタッフに深甚なる敬意と謝意を表したい.

 
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