日本消化器内視鏡学会雑誌
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肥厚性胃炎に癌の合併した3症例
小山 隆三小関 純一及川 潤一川島 真人近藤 敦小山 祥子門野 豊竹内 秀一小笠原 実友寄 高士佐々木 真由美吉田 豊
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1980 年 22 巻 7 号 p. 936-948_1

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抄録

 良性本態性肥厚性胃炎に癌の合併する病態は稀である.最近,このような病態を3例経験したので報告する. 症例1)48歳男性.ルイソウを主訴として1977年8月22日入院.胃バリウム検査,内視鏡検査で胃体部大彎側に肥厚,屈曲,蛇行した粘膜襞を認めた.また,体下部大彎側の巨大皺襞からの生検組織に印環細胞癌を認めた.胃全剔術を施行.剔出された胃の組織学的所見では,癌は体部大彎側の巨大皺襞内に限局する深達度mのIIb型早期癌であり,非癌部肥厚粘膜は腺窩上皮の過形成と固有腺の増生から成る肥厚性胃炎像であった.症例2)28歳男性.上腹部痛を訴えて1978年7月15日入院.胃バリウム検査,内視鏡検査で体部大彎側に肥厚した粘膜皺襞を認め,また,体下部大彎側に深い潰瘍を伴うBorrmann III型の癌を認めた.癌は深達度ssrの進行癌であった.非癌部肥厚粘膜の組織像は胃固有腺の腺性肥大であった.症例3)35歳男性.上腹部不快感を主訴として1979年1月8日入院.胃バリウム検査,内視鏡検査で胃体部大彎側に,肥厚,蛇行した粘膜皺襞を認め,さらにこの皺襞から離れた体部後壁にIIc様陥凹病変を認めた.陥凹病変(5×8mm)は,深達度mのIc型早期癌であった.また,肥厚粘膜は胃固有腺の腺性肥大を本態とする肥厚性胃炎の組織像であった.本邦における肥厚性胃炎と癌の合併例は報告した3例を含めて11例と少ない.

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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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