抄録
腹腔鏡検査において,肝表面の照診範囲に限界があることを,われわれも既に報告してきた.また画診断の中でも,近年,特に目ざましい進歩をとげている腹部超音波検査法(以下US)にも盲点があることが知られている.これらの盲点を互いに補うために今回,われわれは,町田製作所ならびに東芝メディカル株式会社の開発した超音波腹腔鏡をはじめて試用した.本機の特徴として,(1)リニア型電子スキャン方式,(2)前方直視型,(3)flexible fiberscopeの内蔵,(4)パニング方式があげられる.これらの特徴をもつため,従来体外操作によるUSでは描出が困難といわれている横隔膜下病変に対しても描出が可能となった.また,体外操作でえられるエコー像に比較してその解像力は,はるかに向上した. このように,本機は,腹腔鏡検査の盲点であった肝内病変の診断能を高めるばかりでなく,腹腔鏡下で探触子の接触可能な臓器への応用も考えられ,腹部臓器診断に関して有用な器機と思われる.