抄録
北海道以外では報告は少ないが,胃テラノーバ症14例を青森県内で経験したので報告した. 胃X線検査は8例に行ない全例虫体を描出できた.胃内視鏡検査では胃壁に穿入した比較的太く長い黄褐色のテラノーバ幼虫A型が見られ,周囲粘膜は浮腫状で出血斑,びらんがあり,アニサキス幼虫との鑑別は容易であった.13例が胃角から体上部,1例が前庭部で小彎側が1例の他はすべて後壁あるいは大彎に穿入していた.2隻の穿入が1例あった.海産魚介類を生食後数時間以内に出現する心窩部痛を主とする激症型が12例で,幼虫を生検鉗子で摘出すると症状は消失した.生食した魚の筋肉内に虫体を発見し診断された無症状の緩和型が2例であった.1月から4月が12例で大部分を占めた. 胃テラノーバ症14例を経験した同一期間に胃アニサキス症は7例で従来と異なる頻度であり,青森県内においては胃テラノーバ症は稀な疾患ではないことが明らかとなった.