抄録
極めて稀な腫瘍である食道血管腫の1例を経験し内視鏡的ポリペクトミーにて切除し得たので報告する.症例は76歳の男性で,主訴は嚥下困難.初診時の食道造影にて上部食道の隆起性病変を指摘された.食道内視鏡では門歯列より約20cmの部位に鉗子による圧迫で容易に陥凹する青赤色調の有茎性隆起性病変を認めた.CTにては,食道内腔に突出する腫瘍像に加え造影剤急速静注により同腫瘍は血管と同程度に濃染し食道血管腫に合致する所見が得られた.ポリペクトミーは,大量出血に備え気管内挿管を行った上で,ポリープ茎部に無水エタノールを局注し,血管腫への血行を途絶させた後に電気焼灼した.切断端よりの出血は全く認めず摘出標本は2 .2×1.2×0.9cmで組織学的にも毛細血管腫と最終診断された.文献上食道血管腫の本邦報告例は25例で,そのうち4例に内視鏡的ポリペクトミーが施行されている.血管腫といえども慎重に施行されれば安全に内視鏡的切除が可能と考えられた.