日本消化器内視鏡学会雑誌
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胃潰瘍瘢痕に起因した隆起性病変の1例
佐藤 博文針金 三弥源 利成福武 和子龍村 俊樹山本 恵一小島 道久大原 裕康柴崎 洋一
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1986 年 28 巻 4 号 p. 782-786_1

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抄録
 胃潰瘍の治癒過程で稀に隆起性病変を形成することがあり,今回われわれは悪性病変との鑑別が困難であった症例を経験したので報告した. 症例は77歳女性,主訴は心窩部痛,胃X線検査では胃角部大彎側に粘膜集中を伴った隆起性病変を2個認めた.その7日後に施行した内視鏡検査では,同部位にcashew nuts様の隆起性病変を1個認めた.隆起の大きさは1.5×2.0cm,立ち上りは急峻で表面平滑であるが,斑状の発赤がみられた.生検ではgroupIIであったが,悪性病変を疑って手術を施行した. 組織学的に隆起は主に粘膜下層の浮腫と線維化によるもので,隆起を前後壁から取り囲むようにしてUl-IVの線状潰瘍瘢痕が形成されていた. 本症例は潰瘍瘢痕の収縮により発生した隆起性病変で,いわゆる隆起型胃潰瘍瘢痕とは異なった疾患と考えられ,過去にも報告のない稀な症例と考えられる.
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© 社団法人日本消化器内視鏡学会
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