抄録
潰瘍底にあきらかな露出血管を認めた上部消化管出血66例を対象とし,3種類の内視鏡的止血法を行った.年齢は19歳から88歳であり,平均年齢は男性59歳,女性66歳であった.疾患別では,胃潰瘍46例(69.7%),十二指腸潰瘍9例(13.6%),胃癌6例(9.1%),ポリペクトミー後の出血3例(4.5%),食道憩室に生じた潰瘍からの出血1例(1.5%),Mallory-Weiss症候群1例(1.5%)であった.重篤な基礎疾患に合併した例は27例(41%)であり,基礎疾患による死亡例は6例(9%)であった.出血の程度は,噴出性または拍動性9例(14%),湧出性31例(47%),内視鏡時止血していたもの26例(39%)であった.止血法はエタノール局注法(A法,7例),A法とsucralfateのdirect-coating法との併用法(B法,16例),A法とsucralfate,thrombin混合物のdirect-coating法(C法,43例)の3種類を行った.A法,B法およびC法の止血率は86%,94%,100%であった.重篤な基礎疾患を合併した例での止血率も100%であった.以上からエタノール局注法と薬剤direct-coating法との併用法は,潰瘍底に露出血管を有する上部消化管出血に対して有効な止血法であると考えた.