抄録
慢性関節リウマチ,敗血症の治療中に大量下血をきたしたため緊急手術を施行し,術中コロノスコピーにて発見された大腸微小粘膜欠損の1例を経験したので,文献的考察を加え報告した. 症例は63歳,男性で,昭和61年8月13日より暗赤色の下血が出現するようになったため輸液・輸血を行いながら経過観察していたが,下血量が3,200mlに及んだため,翌14日に緊急手術を施行した.開腹すると,結腸の肝彎曲部,脾彎曲部に大量の血液が貯留していたが,腫瘤や虚血性病変は認めなかった.術中コロノスコピーを施行したところ横行結腸右3の自由ヒモに相当する粘膜より血管が突出し,先端より拍動性に出血していたため,2×2cm大の大腸部分切除術を行った.病理組織学的には,Ul-Iの孤立性粘膜欠損があり,その部位より直径1mm,長さ3mmの血管が突出していた.粘膜下層を蛇行する太い異常血管は認められなかったが,Dieulafoy潰瘍に類似する疾患であると考えられた.