抄録
早期胃悪性リンパ腫は稀な疾患であるが,その報告も次第に増加しつつある.最近,約3カ月の間に,病変の著明な縮小と変形を示した早期胃悪性リンパ腫の1例を経験した.症例は54歳の男性で,上腹部痛を主訴として胃X線検査や内視鏡検査を受け,胃前庭部後壁に軽度隆起した潰瘍性病変を認めた.生検にて組織学的確診が得られず,しばらく経過を観察した.病変はひだ集中を伴いながら縮小し,クローバー状潰瘍となった.その一部は良性の消化性潰瘍をおもわせた.手術標本では,同部はUlIIの瘢痕となり,その他の部位もさらに縮小し,不整形な小陥凹を残すのみとなった.その陥凹部の一部に約1cm大の悪性リンパ腫を認めた.腫瘍の縮小は,潰瘍形成による腫瘍の脱落と腫瘍自身の退縮が関与していたと考えられた.さらに,本病変が悪性サイクルを示す可能性も示唆された.