抄録
1981年から1992年までに経験した急性出血性直腸潰瘍31例について,内視鏡所見と臨床的特徴との関連を検討した.病変の形態は類円形,不整形,地図状,輪状,露出血管(潰瘍不明)の5型に分けられ,それぞれに単発・多発例がみられた.基礎疾患との関連では脳血管障害では不整型が,肝障害,開腹術後では類円形が多くみられ,腎不全では前壁に多く存在し,基礎疾患や局在と形態にはある程度関連が認められた.また,便秘例では宿便性潰瘍との異同が問題となり,S状結腸の縦走潰瘍合併例で虚血性直腸炎が疑われた.しかしながら,多くの症例では同様の誘因でも異なる内視鏡所見を呈した.本潰瘍は同一の成因で発症する単一の疾患とは考えにくく,種々の誘因により,あるいは複数の誘因の合併により発生する症候群としてとらえるべきであり,成因の解明には一例毎に内視鏡所見と患者背景等を詳細に検討し,蓄積することが大切であると考えられた.