抄録
患者は69歳,男性.主訴は血便.1990年11月より血便を認めていたが,1991年7月,血便に加えて体重減少も認められ精査入院.腹部超音波検査,腹部CT検査にて肝彎曲部に巨大腫瘤および腹腔内リンパ節腫脹を認めた.注腸造影,大腸内視鏡検査では肝彎曲部に腫瘤と,全大腸にびまん性の小結節状隆起を認めた.生検病理組織標本ではnon-Hodgkin's, diffuse, medium-sized cell typeの悪性リンパ腫と診断した.本例は消化管の形態学的所見からMultiple lymphomatous polyposis of GI tract (MLP)と考えられるが,腹腔内リンパ節腫脹も認められることより,全身性悪性リンパ腫の消化管病変と診断した.従来MLPとして報告されている中にもリンパ腫が続発性にMLP様の所見を示すものも含まれており,MLPの疾患概念を再検討する上で貴重な症例と考え報告した.