1993 年 35 巻 5 号 p. 967-977
胃隆起性病変を対象に,拡大電子内視鏡と帯域強調処理を用いて明瞭化された胃粘膜拡大像を,切除標本による実体顕微鏡像と対比し,病理組織学的検討を行った.過形成性ポリープは,粘膜固有層のうっ血,浮腫などによる腫大した窩間部が実体顕微鏡的に観察され,拡大内視鏡上は発赤調の粗大な粘膜模様を呈した.胃腺腫は,表面の凹凸が少なく,比較的規則的で密に分布する腺口や窩間部が観察され,白色調の緻密で規則的な粘膜模様を呈した.隆起型早期胃癌において,高分化型管状腺癌は,実体顕微鏡的に不規則な腺ロパターンを,乳頭状腺癌は不規則な突起パターンを呈し,拡大内視鏡上いずれも不規則な粘膜模様をとった.以上より,拡大内視鏡像は実体顕微鏡で観察される粘膜微細構造や病理組織像を忠実に反映していることが判明した.これらの事実から,今後種々の病像の胃粘膜を拡大観察することにより,内視鏡の診断能はさらに向上すると考えられた.