抄録
最大径10mm以下の小進行大腸癌9例を臨床病理学的に検討した.肉眼型を早期大腸癌に準じて分類すると,IIc型4例, IIa型2例,Is型3例であった.大腸内分布では, S状結腸に4例と最も多かったが,直腸には1例もみられなかった.深達度はmp6例,ss3例であった.発育様式は,NPGが8例で, PCR-SSCP法ではK-rasのpoint mutationを1例にも認めなかった.リンパ節転移はMw 2例,Mp 1例の計3例で陽性で,深達度別の脈管侵襲率,リンパ節転移率は最大径11mm以上の進行大腸癌と同様に,転移能が高く,最大径10mm以下の小進行大腸癌は単なる進行癌の小型病変ではなく,深部浸潤傾向の強い平坦陥凹型起源病変を多く含んでおり,その悪性度を反映する特殊な病変であると考えられた.また,最大径10mm以下の小進行大腸癌は,通常内視鏡観察で全例にヒダ集中を認め,pit pattern観察が可能であった7例は全例VN型のわずかに浅い陥凹面を有しており,術前sm-rnassive以深の深達度診断は可能であった