抄録
症例は57歳男性.1992年7月と1994年3月に胃体上部後壁の出血性潰瘍を認めている.1994年12月には,潰瘍は疲痕化していたものの,Helicobacter pylori(HP)陽性のため,除菌治療が施行された.潰瘍搬痕部の生検では悪性所見は得られなかった.除菌治療は成功したものの,1996年7月に同部位に潰瘍再発を認めた.その際HPは陰性が持続していた.1998年9月,再び同部位に潰瘍再発を認め,HPは陰性であったが,生検ではgroupIVであった.その後の内視鏡検査再検では,潰瘍は治癒し,広範IIb様早期胃癌を呈していた.癌境界不明のため,1998年10月胃全摘出術が施行された.HP陽性胃潰瘍例では,除菌成功後も,特に潰瘍再発を繰り返す例では胃癌の発現に注意する必要がある思われた.