2018 年 15 巻 1 号 p. 15-20
【はじめに】汎発性腹膜炎術後の手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)発生率は約80%との報告がある。一方で,消化管穿孔などの汚染手術後の症例で,一期的縫合を行わず局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy:以下,NPWT)後に遷延一次縫合を行い良好な創傷治癒を認めたとの報告が散見される。穿孔性腹膜炎に対する開腹手術症例の術後創部感染に対する予防的 NPWTの有用性を後ろ向きに検討した。【対象と方法】2010年 1月から 2014年 12月までの一期的縫合を行った対照群(以下,C群)n=59症例と,2015年 1月から 2016年8月までに予防的 NPWTを行った NPWT群(以下,N群)n=42症例を対象とした。2群間の表層・深部 SSI発生率を比較検討した。【結果】SSIの発生率は,45.8%/9.5%(P<0.001)と N群で低値だった。術後在院日数は,35日/24日(P=0.003)と N群で短期間だった。【結語】予防的 NPWTの導入により穿孔性腹膜炎術後創部の SSI発生率が有意に低下し,術後在院日数も有意に短縮した。