日本外科感染症学会雑誌
Online ISSN : 2434-0103
Print ISSN : 1349-5755
ミニ特集②:胆汁漏と膵液瘻の管理
膵頭十二指腸切除術の工夫
─肝円索を用いた胃十二指腸動脈断端の被覆法(Clip & Wrap法)
安保 義恭高田 実田本 英司中村 文隆樫村 暢一
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2018 年 15 巻 1 号 p. 63-70

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抄録

【目的】膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy:以下,PD)後の感染性合併症のなかでも術後出血は重篤な合併症の 1つである。出血予防策として,廓清された肝動脈領域の肝円索被覆が有効とされている。当科で行っている胃十二指腸動脈(gastroduodenal artery:以下,GDA)断端の肝円索を用いた被覆例について報告する。【方法】2009年から 2016年までに PDを施行した 345例を対象とした。全症例に GDA断端の肝円索被覆を施行した。前半の2012年までは GDAの結紮と肝円索被覆を行い(Wrap群),2013年からは GDA断端を clippingしたうえで肝円索被覆を施行した(Clip & Wrap群)。疾患背景と膵液瘻,術後出血例につき検討した。【結果】肝円索で被覆された肝動脈枝からの全出血例は 10例(2.9%)で,Wrap群は 5例(3.5%),Clip & Wrap群は 5例(2.5%))であった。GDAからの出血は 5例(1.4%),Wrap群 2例(1.4%),Clip & Wrap群 3例(1.5%)であった。全例 TAEにより止血され,再手術例や死亡例はなかった。出血時期は Clip & Wrap群で術後 27日目と遅かった。【結語】肝円索による動脈被覆は術後出血の予防策として有用であり,出血の際も重篤に至ることなく止血処置ができた。Clip & Wrap法による GDA断端の肝円索被覆法は,簡便で断端固定が安定した保護効果が高い手技である。

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© © 2018, 一般社団法人 日本外科感染症学会
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