現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
動的因子モデルに基づくグローバル資産市場のリターン予測~月次リターンの同時確率分布の事前推定~
中島 英喜
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ジャーナル オープンアクセス

2003 年 13 巻 p. 47-79

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抄録

本研究は,先進17カ国の株式,債券,通貨市場に関する中島[2002]のリターン・モデルを「確率予測(同時確率分布の事前推定)」の観点から分析し,より有効なモデルと推定方法を検討したものである.分析にあたっては,(1)因子構造に基づく4種類の無相関制約,(2)各因子の動学構造の変更,(3)両者の相乗効果という3つの効果を考え,これらをDawid[1984]のprequential基準によって評価した.この基準は逐次的外挿評価に基づくものであり,一致性と漸近的効率性を有する.また,内挿バイアスを自然に回避できることから,AICのような漸近近似は不要である.さらに,構造変化の検出に優れているため,各モデルの頑健性を評価できる利点もある.検証の結果,上記3つの効果は,適用対象(因子の種類,資産クラス,大規模投機の有無)によって特徴的な差異を示すことが分かった.これは,グローバル資産市場に「因子構造に則した非定常性」が存在することを意味している.なお,こうした非定常性を考慮すると,モデルのリターン予測能カ(外挿)は大輻に向上するが,この場合,全ての非定常性を構造化するより,パラメータ制約やサンプリング戦略の変更といったアプローチを併用した方が有効である.

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© 2003 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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