2004 年 16 巻 p. 3-21
本研究は,1990年から2002年までの日本の上場企業間の合併をサンプルとして,合併企業の株価に関する株式市場の効率性を検証している.合併比率発表日から合併日までの期間,合併企業株価は合併比率に基づく理論株価から乖離しており,その乖離はファンダメンタルズでは説明出来ず,株式貸借市場の不完全性や流動性不足によってアービトラージが制約されることに原因があることを確認した.しかし,このような乖離に基づくアービトラージ取引からは,アービトラージの制約要因を調整すると有意な超過リターンは得られなかった.このことから,合併企業の株価の合併比率に基づく理論株価からの乖離は存在するものの,それは主として市場のイ不完全性に起因したアービトラージの限界により発生したものであり,市場が整備されることにより効率性が高まることを示唆している.