現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
100パーセント・マネー再論:フィナンシャル・テクノロジーの挑戦
Nai-Fu Chen小林 孝雄佐井 りさ
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 20 巻 p. 3-36

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抄録

近年のフィナンシャル・イノベーションは,貸出債権を市場に売却することを可能にした.これによって,銀行は貸出債権の大部分を広範な投資家層に移転し,情報レントと信用リスクを凝縮したレジデュアル部分だけを保有すればよくなった.

われわれの試算によれば,商業用貸出債権ポートフォリオを証券化するにあたって,銀行が留保するべきレジデュアル・トランシェはわずか3%前後である.これこそが,市場の論理から決定される銀行の自己資本比率である.この仕組みに加えて,決済システムの安全性を確保できれば,銀行システムは従米の金融仲介機能を果たしながら,完全に安全なシステムに生まれ変わることができる.

かつてIrving Fisherが主張した「100%マネー」の銀行システムは,新しいフィナンシャル・テクノロジーの登場によってその実現可能性を飛躍的に高めた.この新体系は,預金保険の利用に起因する銀行行動のモラル・ハザードに苛まれ続け,しばしば危機に晒されてきた従来の部分リザーブ型銀行システムより明らかに優れている.

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© 2006 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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