現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
年金債務が確率的に変動するときの最適年金ポートフォリオ
桂 眞一森田 洋
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 23 巻 p. 61-89

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抄録

本論文では,年金資産運用において将来の給付額と積立額の差頷の現在価値を負債として明示的に取り入れ,それが確率的に変動する状況下でサープラスの期待効用を最大化する問題を取り扱い,最遥投資戦略はいかなる性質をもつかを分析する.最適ポートフォリオは,負債が0の場合の仮想上の最適ポートフォリオと給付債務を複製するポートフォリオの加重平均となることが示される.この性質は投資家の効用関数が単調性,凹性といった標準的な数学的条件が課される限り成立する.さらに,年金基金が本論文の最適ポートフォリオを採用した場合の運用実績が実際のものと大きく乖離するか否かを実データを利用して調べてみた.その結果,実際の年金基金は株式に対する投資比率が高すぎ,また最適ポートフォリオのサープラスは実際の年金基金のサープラスと比較すると期間を通じて安定していることが明らかとなった.

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© 2008 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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