現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
ティック・サイズ縮小と指値注文市場における価格発見との関係
畠中 賢治
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2019 年 41 巻 p. 57-69

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抄録

本研究では,東京証券取引所がTOPIX100構成銘柄を対象に2014年に実施した呼値の刻み(ティック・サイズ)の縮小が,指値注文市場の価格発見に与える影響について分析を行った.ティック・サイズは時間優先,価格優先の原則に従う指値注文市場において,注文の約定可能性と即時性を要求する際のコストに関連しており,ティック・サイズの縮小は投資家の注文行動を変化させることがこれまでの理論研究,実証研究により示されている.本研究では,注文行動を即時性や約定可能性ごとに分類し,それぞれの注文が持つ価格発見への寄与度をイベント前後で推定することで,ティック・サイズ縮小に伴う市場の価格発見機能への影響を評価した.推定結果から,ティック・サイズ縮小による市場の価格発見機能への影響と,影響の大小がティック・サイズ縮小の程度に依存する傾向が分析対象において明らかとなった.なお,本分析で見られた影響は,最良気配への注文が持つ価格発見への寄与度の減少,最良気配以外への注文と約定価格が持つ価格発見への寄与度の増加である.さらに同分析から,縮小前は最良気配への注文と最良気配以外への注文が同程度に価格発見を主導するが,縮小後は最良気配以外への注文のみが価格発見を主導することが明らかとなった.

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© 2019 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
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