ジェンダー史学
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海外の新潮流
ジェンダー史 / 女性史の新潮流
──サハラ以南アフリカの事例──
富永 智津子
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2017 年 13 巻 p. 79-90

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抄録

サハラ以南のアフリカ地域を対象とした女性史 / ジェンダー史研究は、「女性と開発」という研究領域の広がりの中で1970年代に産声をあげた。経済的に重要な役割を果たしてきた農村女性が注目され、それが引き金となって、無視されてきた歴史の中の女性に光があてられるようになったのである。

浮上したテーマは、1970年代の「忘れられたヒロインたち」(王母、大商人、霊媒師、解放運動や抵抗運動のリーダーなど)から、1980年代は「下層階級の女性たち」(売春婦、奴隷、家事労働者など)に重心が移行し、1990年代から2000年代初頭には、客体としての女性像から、歴史主体(エージェンシー)としての女性像へのアプローチの転換があった。こうした女性史の再構築の時期を経て、2010年前後には、ジェンダーの視点から植民地時代と独立後の歴史を読み直す作業が展開する一方、HIV / エイズの大流行とも響き合って、同性愛や男性性といった従来の歴史学の対象からは排除されていたテーマが浮上している。もちろん、こうしたテーマやアプローチは、時期的にオーヴァーラップしていることはいうまでもない(バーガー& ホワイト2004)。

ここでは、以上のような大きな研究史の流れを念頭に、植民地史(近代史)と現代史、およびテーマそのものがジェンダーにかかわる「同性愛」と「男性性」に関する2000 年代以降の文献を中心に紹介しながら、アフリカ女性史 / ジェンダー史研究の新潮流を探ってみたい。

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© 2017 本論文著者
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