2015 年 38 巻 3 号 p. 221-223
上行結腸憩室炎に合併した上腸間膜静脈血栓症に保存的治療が奏功した1例を報告する. 患者は79歳の男性. 持続する発熱と右側腹部違和感のため入院した. 腹部造影CTで上行結腸の憩室と周囲の脂肪織濃度上昇, および上腸間膜静脈内の陰影欠損を認め, 上行結腸憩室炎と上腸間膜静脈血栓症と診断した. 憩室炎に対して抗菌薬治療を行った. 腹膜刺激症状や腸管壊死の所見を認めなかったため, 上腸間膜静脈血栓症については保存的治療とし抗凝固療法を行った. 発熱や腹部違和感は消失し退院した. 上腸間膜静脈血栓症は大腸憩室炎に稀に合併することがある. 手術を行っても死亡率が高い疾患であるが, 腹部造影CTで早期に診断し抗凝固療法を開始することで, 手術を行わず救命できる可能性がある.