言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
特集 日本語アクセント記述研究の新展開
八重山諸島黒島方言アクセントの仕組み
――その韻律範疇PWdと下がり目の出現条件――
松森 晶子
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2016 年 150 巻 p. 59-85

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抄録

本稿は,琉球八重山諸島の黒島方言に焦点を当てて,この方言のアクセントの仕組みを明らかにする試みを行う。まず本稿では,黒島方言には(一見したところ)原因不明なアクセントの型の交替が見られる,という事実の指摘から始め,このような交替の原因を明らかにするためには,これまで多良間島や池間島などのいくつかの宮古諸島の体系において,そのアクセント位置の算出に機能していることが分かっている「韻律語(音韻語)(PWd)」という韻律範疇を想定することが必要になることを論じる。あわせて本稿では,これまで二型アクセント体系として記述されてきた黒島方言は,実は3種類の型の対立を持つ三型アクセント体系であることも報告する。そして,どのような条件のもとでその3種類の型の区別が明瞭に出現するのかを予測・説明するためにも,やはり上述のPWdという韻律範疇の想定が不可欠であることを論じる。

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© 日本言語学会, 著者
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