言語研究
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ムンダ語の経験的動詞構文について
長田 俊樹
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1999 年 1999 巻 115 号 p. 51-76

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抄録

ムンダ語には,感覚や心理,および生理的な経験をしめす動詞に二種の構文がある.前著(Osada 1992)では,それぞれ直接主語構文と与格主語構文とみなし,インド・アーリア諸語(以下IA)やドラヴィダ諸語と共通する南アジア言語領域の特徴と考えた.ところが,ムンダ語には主語と目的語の形態論的区別はなく,与格主語構文とみるのはあきらかに誤りである.そこで,統語論的視点から,あらたに分析を試みた.その結果,ムンダ語の経験的動詞構文とIAのそれとの間に以下のような相違点のあることがあきらかになった.
経験的動詞はムンダ語では自動詞なのに対し,IAでは他動詞である.経験者はIAでは与格主語なのに対し,ムンダ語では目的語として表示される.また,これら二種構文の意味的相違は,IAでは中立・非意志性の対立を示すのに対し,ムンダ語では一般・特定の対立であるなど,従来指摘されてきた類似点より相違点が多いことを論証した.

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