抄録
本研究は宇宙線生成核種の10Beを沈み込み帯マグマのトレーサーとした研究である。沈み込み帯火山岩からは海嶺玄武岩等と比較して高濃度の10Beが確認されている。地球形成時の初期10Beは既に壊変して消滅していることから、島弧火山岩の10Beは沈み込んだ堆積物起源であると考えられる。本研究では伊豆島弧火山岩試料(大島、三宅島、新島)の10Be濃度およびBe同位体比を示し、他の島弧との比較やBe同位体比の島弧横断弧方向での変化を調べることが目的である。
結果は伊豆島弧試料の10Be濃度は他の島弧よりも低い値が確認された。また、島弧横断方向でのBe同位体比の結果は、大島試料で高い同位体比を示したが、三宅島-新島間では明確な差が見られなかった。Be同位体比の変化は含水鉱物の脱水過程および流体の関与を反映していると考えられるが、その詳細については現在検討中である。