海底熱水環境下における堆積物中のアミノ酸の安定性を見積もるために行ってきた水熱実験の結果をまとめる。海底堆積物や粘土鉱物とNaCl溶液を耐熱容器に入れ,100-300℃・静水圧-300atmの様々な条件で加熱・加圧した。試料は酸分解し液体クロマトグラフでα-アミノ酸及び非タンパク質アミノ酸を定量した。石灰質軟泥とケイ質軟泥を使った実験においては,ケイ質軟泥を使った実験の方がアミノ酸が安定に存在できる。20atmと300atmの実験では,150℃以上の温度ではケイ質軟泥中のアミノ酸の溶出・分解に及ぼす圧力の影響はほとんど見られない。しかしながら100℃の溶液中で,中性非極性アミノ酸の残存濃度が20atmよりも300atmで高い。これは溶出したタンパク質が低分子化するときに,高圧下ほど低分子化が進みにくいことが考えられる。