抄録
干潟に生息する底生微細藻類は、一次生産者として他の生物生産を支える一方、堆積物中の物質循環においても生物濃縮を通し重要な役割を担っているといわれている。本研究では、名古屋市藤前干潟で堆積物表層および鉛直コア試料を採取し、クロロフィル濃度とオパールシリカ濃度測定から得られた生物量、蛍光X線分析・有機元素分析から得られた堆積物化学組成および粒度組成を元に、底生微細藻類の生息環境と物質循環の中での役割を考察した。2009年夏採集した試料を分析した結果、底生微細藻類が堆積物中においてリンを制限栄養素として物質循環に関与していたこと、細粒画分の多い場所に多く生息していたことが確認できた。またクロロフィルaはCr/TiO2に対して中程度以上の正の相関がみられたことより、底生微細藻類によるCr濃縮の可能性やCr耐性なども考えられ今後の研究課題としたい。