抄録
秋田県玉川温泉を代表する大噴からは強酸性温泉水が湧出している.かつて,田沢湖を死の湖に変えたこの酸性泉は,現在,中和処理を施された後,玉川最大の支流である渋黒川へと放水される.また,玉川ダムにより,酸性河川水の希釈が促進され,河川流域のpHは大幅に改善された.一方で,この酸性泉中にはAs,Pbなどの有害元素やIn,Gaなどのレアメタルも存在している.酸性河川中に流入したこれらの元素の挙動について,詳しい調査は行われてはいない.河川水中では,Inに比べてAsの方が優先的に河床に堆積する傾向があり,事実,河床やダム湖湖底の堆積物中のAs/In比率は,下流に向かうほど小さくなる.一方で,水深20~30mで採取した堆積物中のAs/In比率は,宝仙湖表層付近で採取した堆積物よりもAsの比率が高いことが確認された.