駿河湾‐遠州灘沖で黒潮の大蛇行を含む期間に採水した海水試料について、真空中で溶存無機炭素のCO2ガス抽出およびグラファイト化を行い、AMS法により14C濃度を測定した。採水期間を通じて、駿河湾‐遠州灘沖の中深層、特に深度400mから600mの海水の14C濃度が、Δ14C値にして100‰程度の変動幅で変動していることを明らかにした。このΔ14C値の変動は、海水の密度の変動と一致していた。したがって、14C濃度は、駿河湾‐遠州灘沖の中深層の海水の鉛直方向の移動を反映していると考えられる。また、遠州灘沖において、黒潮の大蛇行の期間に14C濃度の減少が認められたことから、大蛇行に伴う湧昇により大量の海水が深部から供給されたと考えられる。