抄録
本研究はモンゴルのアプチアン期湖成層(シネフダグ層)を対象に,OAE1a時の陸域環境変動の解明を試みている.シネフダグ湖成層は,頁岩とドロマイトのリズミカルな互層(数10cm,数m,10~20 mサイクル)からなる.本研究では,その堆積メカニズムを解明するため,堆積相解析,鉱物組成分析,有機地球化学分析を行った.C/N比およびロックエバル分析の結果,シネフダグ湖成層の有機物は主に湖内の藻類に由来することが示唆された.またドロマイト層準では藻類やバクテリアが卓越するのに対し,頁岩層準では藻類に加えて湖岸からの高等植物起源有機物の流入も寄与していたことが示唆された.これらの結果と堆積相解析から,シネフダグ湖成層に見られる頁岩とドロマイトのリズミカルな互層(数千年,数万年,数10万年サイクルに相当)は,地球軌道要素の変動に起因した湖水位の変動,すなわち湿潤-乾燥といった気候変動に対応している可能性が示唆された.