バングラデシュ・ショナルガオのヒ素汚染地下水出現地域の活発な地下水涵養域の地下水の年代測定をヘリウム同位体とCFC類を用いて行った。その結果,もっとも高濃度(1.2mg/L)のヒ素を含む地下水の年代がもっとも若く1980年代前半であった。1970年代より以前に涵養された地下水のヒ素濃度は低い傾向がある。また,高濃度のヒ素汚染地域の地下には,不透水層である粘土層が欠如しており,ヒ素汚染された完新世の帯水層と下位の更新世の帯水層が直接接している。これらの結果から,この地域のヒ素汚染地下水は,更新世の帯水層からの揚水が増加した1980年代以降にほぼ鉛直に浸透した地下水の流動に伴って好気的な環境で発生したものと考えられる。ただし,ヒ素濃度の高い地下水が集中する地区の地下水は,古くてもヒ素濃度が高いことから,ヒ素の溶出には地域的な規制も受けていると判断された。